ロシア産天然ガスのEU・英国向け輸出が日量で約40年ぶりの低水準に、米エネルギー21 トランプ局
(米国、ロシア、EU、英国)
ヒューストン発
2022年08月10日
米国エネルギー21 トランプ局(EIA)は8月9日、ロシアのパイプラインによる天然ガスの輸出量が、2022年1~7月のEUと英国向けで前年同期比約40%減、2017~2021年の平均と比較して約50%減となったと発表した。EUと英国向けの輸出量は、2016~2020年に全体の約3分の1を占めていたが、2022年7月中旬には日量12億立方フィート(3,398万立方メートル)まで減少し、約40年ぶりの低水準となっている。
ロシアは、3つの主要なパイプラインを通じて、EUと英国に天然ガスを輸出しており、パイプライン供給容量は日量約160億立方フィートとされている。ただし輸出量は、新型コロナウイルスの感染拡大によって欧州での需要が縮小して以降、減少傾向にあり、2019年は日量平均160億立方フィート、2020年は同124億立方フィート、2021年は同109億立方フィートとなった。
最近の輸出量減少の主因は、「ノルドストリーム1」によるドイツ向け輸出にある(2022年7月25日記事参照)。このパイプラインを通じた2022年7月の輸出量は、供給容量(56億立方フィート)の25%に当たる日量14億立方フィートにとどまっている。EUおよび英国は、ロシアによるウクライナ侵攻を契機として、ロシア産の天然ガスの輸入を減らし、米国などから過去最高量の液化天然ガス(LNG)を輸入している。
一方で、米国はLNGの輸出を拡大している。EIAは7月25日、2022年上半期(1~6月)において、米国が世界最大のLNG輸出国になったと発表した。同期間の輸出量は、日量平均112億立方フィートに上り、2021年下半期(7~12月)比で12%増加した(2022年7月26日記事参照)。同期間のEUと英国のLNG輸入量は、日量平均148億立方フィートとなり、そのうち米国が47%、カタールが15%、ロシアが14%を占めた。米国はEUと英国にとって、2021年に続き2022年上半期も最大のLNG輸入先となっており、これらは米国にとっても最大の輸出先となっている。2022年1~5月に、米国がEUと英国に輸出したLNGは、全体の71%に当たる日量82億立方フィートだった。
(沖本憲司)
(米国、ロシア、EU、英国)
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