ドイツ産業界、ガス賦課金額がもたらす負担について警告
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
デュッセルドルフ発
2022年08月24日
ドイツで10月1日からのガス価格への賦課金額発表()に対し、経済団体は8月15日に見解を示した。研究所もガスと原油価格高騰による経済への影響を試算している。
ドイツ産業連盟(BDI)のホルガー・レシュ副会長は声明で「エネルギーコストが高騰する中、賦課金導入はエネルギー集約型産業だけではなく、ドイツの産業界全てに大きな追加負担となる」とコメントし、負担を平準化するため「連邦政府は2024年以降も賦課金の徴収を検討すべきだ」とした。また、特に助成が必要な企業を支援し、産業全体の競争力を維持することが必要だと指摘した。8月19日付「ハンデルスブラット」紙によると、同氏はドイツ政府によるガスへの付加価値税(VAT)7%への引き下げ決定は効果的でないとコメントし、電力税をEUの最低額へ引き下げることを要求した。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のペーター・アドリアン会長も声明で、賦課金導入によりガス価格が「危機的な水準になるだけではなく、多くの場合、企業の存続を危うくする水準になる」と警鐘を鳴らした。DIHKが7月25日に発表した調査(約3,500社が回答)によると、現在のエネルギー状況への対応として「生産の縮小や少なくとも事業分野の一部の廃止をせざるを得ない」と回答した鉱工業の企業は16%を占めた。エネルギー集約型産業に絞ると、上記の回答割合は32%に上る。また、鉱工業の企業の63%は高い電力・ガス価格がドイツの産業競争力を脅かすとした。
ケルン経済研究所(IW)が8月11日に発表した試算によると、高騰するガスと原油価格の影響により、インフレ率が2022年に0.9~1.0ポイント、2023年に1.3~3.8ポイント上昇する見込み。失業率については、2022年に0.1ポイント増加して3万人が失業、2023年には0.4~0.6ポイント増加し、最大30万7,000人が失業すると見込んでいる。さらに、GDPは2022年に0.2~1.3%、2023年に0.2~2.0%減少し、合計最大700億ユーロの損失が予想されるとした。なお、この試算ではガス供給が完全に停止した場合の生産ロスの影響は含まれていない。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
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