資金流出続くパキスタン、経常収支赤字が拡大
(パキスタン)
アジア大洋州課
2022年08月29日
経済状態が厳しいパキスタンの通貨は先週も売られた。8月26日の為替レートは、1ドル=220.70パキスタン・ルピーと前週から2.6%減価した。パキスタン中央銀行は、8月23日に2022年4~6月期の国際収支統計を発表した。経常収支の赤字は前年同期より17億ドル拡大し、42億ドルとなった。サービス収支の赤字が16億ドルと10億ドル拡大したことが響いた。また、貿易収支も98億ドルの赤字となり、前年同期より5億ドル赤字額が拡大した。
金融収支は27億ドルの流出超過にある。前年同月から38億ドル縮小したものの、2四半期ぶりの流出超過となった。2021年は176億ドルの流出超過があったが、引き続き、パキスタンから資金が逃避している。金融収支の中でも、特に、直接投資収支が5億ドル流出したことに加えて、その他投資が24億ドル流出した影響が大きかった。これは、政府の負債が増加していることによるものだ。
経常収支赤字の拡大は、外貨準備高の減少を意識させ、資本の流出、為替レートの減価につながる。パキスタン・ルピー安は、パキスタンのドル建て債務支払いを拡大させるとともに、輸入物価の上昇を招き、さらなる経常収支赤字の拡大へとつながる悪循環を生み出す。政府は、この対策として、一部の輸入品に信用状の開設を要求するなどして(2022年7月19日記事参照)、輸入抑止・外貨準備の減少を意図する政策を打ち出している。
外貨準備高の減少に対応すべく、政府はIMFとの交渉を進めている。パキスタンの外貨準備高は2022年6月時点では、前年同月比49.8%減の78億ドルとほぼ半減した。各種報道によると、8月29日のIMF理事会において、IMFがパキスタンに12億ドルの融資を実行するかを検討することになっている。IMFの支援が本格的に始まれば、各国からの支援も期待でき、減価が続く為替レートも反転することが見込まれる。
(新田浩之)
(パキスタン)
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