エネルギー大手ユニパーの救済措置に合意、ドイツ政府が約3割の株式保有へ
(ドイツ、フィンランド、ウクライナ、ロシア)
デュッセルドルフ発
2022年08月02日
ドイツ連邦政府は7月22日、政府と同国のエネルギー大手ユニパー、同社の主要株主であるフィンランドの電力大手フォータムの3者間で、ユニパーの救済措置に合意したと発表した。
ユニパーはドイツ最大のロシア産天然ガスの輸入者で、6月14日以降、契約上保証されたガス供給量からの急激な減少によって深刻な経営危機に陥ったため、7月8日に救済措置を申請していた(2022年7月19日記事参照)。オラフ・ショルツ首相は、多くの国民や企業にエネルギーを供給する企業のユニパーはドイツの発展にとって「極めて重要」と強調し、「全ての必要なことを必要な限りを行う」とした。
具体的には次のとおりの措置に合意した。ユニパーが7月18日にドイツ復興金融公庫(KfW)の20億ユーロの与信枠いっぱいまで借り入れを行ったため、これを90億ユーロに拡大すると同時に、使途も拡大される。また、最大80億ユーロを自己資本として見なすことができるとされる。すなわち、政府は約2億6,700万ユーロを投じ、1株当たり1.70ユーロで株式の30%を購入する。さらに、政府は最大77億ユーロを転換社債のかたちで引き受ける。また、政府がユニパーの監査役会に監査役員として加わり、同社取締役への報酬制限と株主への配当禁止も適用される。
フォータムは40億ユーロ規模の株主融資を引き揚げないことを約束する。同株主融資は必要に応じて後日、一部を転換社債とすることが可能。加えて、フォータムはユニパーに40億ユーロの与信枠を提供する。フォータムは現在、ユニパーの株式の78%弱を保有しているが、政府による出資後の持株比率は約56%となる。
救済措置の資本性金融商品はユニパーの株主総会の承認が必要だ。さらに、全ての救済措置に欧州委員会の承認が必要なため、連邦政府は既に欧州委員会と集中的に協議を進めている。
同救済措置の前提は、改正エネルギー確保法に基づき、全てのロシア産ガスの輸入者がロシア産ガス不足分を代替するガスの調達にかかる追加費用の90%を顧客に転嫁できるということだ。同転換は遅くとも2022年10月1日から可能になる予定だが、政府は前倒しして9月1日からの転嫁の可能性について検討中。なお、ユニパーは6月14日~9月30日までの損失が約62億ユーロとなる見込みとした。
(ベアナデット・マイヤー)
(ドイツ、フィンランド、ウクライナ、ロシア)
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