エネルギー大手ユニパーが政府に救済申請、ガス価格上昇が影響
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
デュッセルドルフ発
2022年07月19日
ドイツのエネルギー大手ユニパーは7月8日、連邦政府に対し救済措置を申請した。同時に、改正エネルギー確保法(2022年5月2日記事参照)の再度の改正が同日に成立しており、同社はこれに基づき、上昇した天然ガス購買価格の適切な範囲での顧客への転嫁を可能とするよう政府に求めた。さらに、現時点で未利用であるドイツ復興金融公庫(KfW)の最大20億ユーロの与信限度枠の拡大と、政府からの直接出資も要請した。
ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は同日、「救済措置の具体的な形については現在、交渉中だ。社会システム上の重要な企業が破産し、その結果、世界のエネルギー市場が混乱に陥ることはあってはならない」と述べた。フィンランドの電力大手フォータムはユニパーの株式の78%弱を保有しているため、フォータムもユニパーの安定化についてドイツ政府と協議中だ。
ユニパーは、ロシアのウクライナ侵攻が引き起こしたエネルギー供給問題に大きな影響を受けている。ドイツ政府が承認手続きを停止した天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」(2022年2月24日記事参照)について、同社は3月7日、出資した9億8,700万ユーロの減損処理をすると発表(2022年3月15日記事参照)。また6月29日には、発表済みの2022年通期の業績見通しを撤回した。背景には、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」経由のガス供給量が、6月14日に急激に減らされたことがある。ユニパーにはそれ以降、ガスプロムとの契約上保証されたガス供給量の40%しか供給されておらず、不足分の調達に追加費用がかかり、顧客への価格転嫁もできていないため、財務状況の悪化が生じている。7月8日の記者会見で、同社のクラウス・ディーター・マウバッハCEO(最高経営責任)は、ガス調達価格の上昇と顧客への価格転嫁ができない状況が続く場合、2022年末までに損失が最大で100億ユーロまで膨らむ可能性があると説明した。
なお、「ノルドストリーム1」は、7月11日から定期点検のため、天然ガスの供給を完全に停止している。10日間程度を予定しているが、点検終了後のガス供給再開の有無や時期、供給量が懸念されている。連邦ネットワーク庁は「ノルドストリーム1」のガス供給量が40%以下にとどまる場合、ガス貯蔵法で定めた11月1日時点の貯蔵施設の最低貯蔵率90%(2022年4月4日記事参照)は達成できないと予想する。なお同庁によると、7月16日時点の貯蔵率は64.6%だった。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
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