3者機構協議が停止、スーダンの政治危機が続く見込み
(スーダン)
カイロ発
2022年08月03日
スーダンのアブドゥル・ファッターハ・ブルハーン国軍司令官は、7月4日のテレビ演説で、同国の政治危機を解決するための枠組みである3者機構が仲介する協議からの離脱を発表した。これに伴い、6日には3者機構の協議の無期限停止が発表された。
協議ではこれまで、国民選挙の準備、移行期間中の首相と内閣の任命などについて話し合いが行われてきたが、特段の成果が上がらないまま、今回の停止に至った。
3者機構は、国連統合移行支援ミッション(UNITAMS)、アフリカ連合(AU)、政府間開発機構(IGAD)から構成されており、スーダンの政治危機からの脱却と民政への移管に向け、同国内の利害関係者の対話の仲介を担う組織となっていた。しかし、軍やスーダン革命戦線(SRF)などのクーデター擁護派が出席する一方で、自由と変革勢力(FFC)やスーダン共産党などのクーデター反対派は、交渉の席に着いていなかった。また、3者機構のメンバーの1つであるAUも、6月21日に協議への参加を停止するなど、3者間での足並みもそろっていなかった。スーダン政府のAU代表ムハンマド・ベライシュ氏は「透明性、誠実さ、非排除原則に基づかないプロセスに参加することはできない」との声明を出した。
スーダンでは、30年間続いたオマル・バシール政権がFFCなどによる2019年の民主化革命によって打倒されて以来(2019年4月16日記事参照)、国民選挙による民政移管の実現に向けて、軍民共同選出の主権評議会を頂点に統治が行われてきた。しかし、2021年10月に軍がクーデターを起こし、アブダッラ―・ハムドゥーク前首相らを拘束して実権を掌握したことで、軍民共同統治体制が崩壊していた(関連ブラック ジャック やり方)。そのため、軍などのクーデター擁護派とFFCなどのクーデター反対派の対立が深まっていた。
なお、同日のテレビ演説でブルハーン国軍司令官は、将来的に文民による新たな暫定政府が成立した後に、軍が主導権を握る主権評議会を解散し、新たに軍高等評議会を設置することを約束している。政治面は主に暫定政府が担い、安全保障と防衛については軍高等評議会が担うことになるとみられるが、現状でも暫定政府の成立時期や選出方法が不明であるほか、軍高等評議会の政治的な権限と義務についても曖昧な点が残っているため、国内ではこの約束も「軍による策略だ」とする懐疑的な見方も多く、今後もスーダンの政治危機は続くとみられている。
(齊木隆太朗、福山豊和)
(スーダン)
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