デリー首都圏、10月以降ディーゼル発電機が原則使用禁止に
(インド)
ニューデリー発
2022年08月17日
インドの大気質管理局(Commission for Air Quality Management:CAQM)は8月5日、デリー首都圏(NCR)における2022年10月からの大気汚染対策として、空気質指数(AQI)を踏まえた段階別の行動計画を示したアクションプランを発表した(添付資料1参照)。デリー首都圏では、例年11月~2月ごろに観測される世界最悪レベルの大気汚染が社会問題化しており、CAQMは本格的な対策始動に向け動いている。
特に日系企業への影響が懸念されるのは、ディーゼル発電機の使用規制だ(2022年5月13日記事参照)。製造業の日系企業は、頻発する停電対策として、敷地内にパックアップ電源用ディーゼル発電機を置いていることが多いが、今回のアクションプランでは、AQIが301以上の場合は、ディーゼル発電機が使用禁止となる旨が明記された(注1)。デリー首都圏の日系企業は現在、発電機のディーゼル・天然ガス併用可能タイプへの改造、ガス発電機の導入、電力供給ソースの多様化などへの準備を余儀なくされている。
CAQMは、7月13日に発表した政策ペーパー「デリー首都圏における大気汚染緩和政策」(注2)において、大気汚染は複合要因によるものとして、ディーゼル発電機のほか、建設業、火力発電、交通車両、野焼き、爆竹の使用などを挙げ、各分野における対応方針を示した(添付資料2参照)。CAQMのアービンド・ノーティヤル次官補は、ジェトロのヒアリング(7月15日)に対し、以下のとおり説明している。
- デリー首都圏の大気汚染状況に照らし、本規制の緩和、施行日延期は考えていない。
- CAQMとしては、産業界にのみ対策を要請しているわけではなく、デリー首都圏管轄の電力会社に対し、電力の安定供給に万全を期すことを求めており、その進捗管理を行っている。
- 初期投資コストは、ディーゼル発電機より高価なるも、運転コストに勝るガス発電機への変更を期待する。また、規制施行後も、停電時に最大2時間まで使用可能なディーゼル・天然ガス併用可能タイプへの改造を最低限お願いしたい。
なお、入居企業からの懸念を踏まえ、ラジャスタン州政府電力会社は、デリー首都圏にあるニムラナ工業団地の日系企業専用地区を「無停電地域」に指定する通達を出した。この通達以降も計画外の停電はみられるものの、同地区は計画停電の対象外となった。
(注1)アクションプランのP16-18に、AQIが301~400になった場合の対応内容の記載あり。ディーゼル発電機の使用禁止規制の詳細は第7項参照。
(注2)本政策ペーパーにおいて、特に製造業企業に関係がある箇所は以下のとおり。
- P16:今回規制適用デリー首都圏(NCR)地図(地図1)
- P33-34:NCRにおける天然ガスの供給状況(表5-7)
- P35:CAQMから電力会社への安定供給要請
- P46-47:ディーゼル発電機使用禁止規制詳細(表9)
- P94:段階的行動計画(GRAP)ステージII(AQI 301-400)でディーゼル発電機使用原則禁止
(波多野知行)
(インド)
ビジネス短信 21ca073dc706c416