ASEAN外相会合、混乱深まる地域情勢を議論
(ASEAN、カンボジア、ミャンマー、中国、米国、ウクライナ)
ジャカルタ発
2022年08月09日
ASEANは議長国カンボジアの首都プノンペンで8月3日、外相会合を開催した。直近のミャンマーやウクライナの情勢などについて議論を交わし、共同声明を発表した。また、米国のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問(2022年8月3日記事参照)を受け、台湾海峡の情勢に対するASEAN外相声明も併せて発表した。
外相会合で開会のあいさつを行ったカンボジアのフン・セン首相は、直近のミャンマー情勢について「ミャンマー国軍による民主活動家4人の処刑(注1)にASEANは失望している」とした上で、「さらに処刑が続く場合は『5項目の合意』(注2)を見直すこともあり得る」と指摘した。共同声明では「国軍からの協力が得られず、『5項目の合意』履行に進展がないことに深く失望した」とも記載している。
ウクライナ情勢については、エネルギーや食料の価格に及ぼす影響について議論を行った。全ての関係者間で平和的な対話が再開され、ウクライナからの穀物輸出が以前の水準に戻ることをASEANとして要求した(シンガポール外務省)。
台湾海峡情勢、ASEANは最大限の自制求める
ペロシ下院議長の台湾訪問を受けて緊迫化した台湾海峡情勢について、ASEAN各外相は「当該地域を不安定化させ、最終的には主要国間の深刻な対立を招く可能性がある」とし、関係国に最大限の自制を訴えた。また「ASEANは全ての当事者間の平和的対話を促進するため、建設的な役割を果たす用意がある」とコメントした。声明では「ASEAN各国は『1つの中国』政策(One-China Policy)を支持する」とあらためて強調しており、インドネシアやベトナム、タイの外務省も同様の声明を発表している。
(注1)ミャンマー国軍は7月25日、4人の民主活動家をテロ行為に加担したとして処刑したと発表した(「チャンネル・ニュース・アジア」7月25日)。ASEANは同日、ミャンマー国軍を非難する議長国声明を発表した。
(注2)2021年4月のASEAN首脳級会議で決定した、ASEANとしてのミャンマー情勢への対応方針(2021年4月27日記事参照)。内容は同国へのASEAN特使派遣などで、2022年のASEAN議長国カンボジアは、フン・セン首相などが既に複数回ミャンマーを訪問している(2022年1月12日記事、3月30日記事参照)。
(上野渉)
(ASEAN、カンボジア、ミャンマー、中国、米国、ウクライナ)
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