公共交通機関利用料金の正常化、先行きは見えず
(チリ)
サンティアゴ発
2022年07月21日
チリの地下鉄やバスなど首都圏州内の公共交通機関の利用料金について、7月19日にラジオ・ウニベルソ(Radio Universo)がフアン・カルロス・ムニョス運輸通信相に行ったインタビューを契機として、新たな展開が見られた。運輸通信相は既に2022年中の利用料金凍結が発表されているこれらの公共交通機関(2022年4月8日記事参照)について、2023年以降に正常化を行う可能性に言及した。併せて、2019年以降、インフレが深刻化する現在まで、公的資金の導入によって長期的に利用料金の据え置きを維持してきた点にも触れ、2023年第1四半期(1~3月)から段階的な措置を講じる予定とも発言した。
しかし、このインタビュー内容が二次的に各種国内メディアで報じられるや否や、運輸通信省は「火消し」を行った。19日中に同省は、ムニョス運輸通信相の発言は現状の公共交通機関の利用料金値上げの発表を意図したものではなく、今後も政府は値上げ措置を回避するために尽力し続けるという内容のコミュニケを発表した。
この「火消し」騒動からは、左派のガブリエル・ボリッチ政権発足から約4カ月が経過した現在も、社会騒乱の引き金となった地下鉄をはじめとする公共交通機関利用料金の値上げ措置(2019年10月29日記事参照)に対する世論の反応に過敏にならざるを得ない政府の内情がうかがえる。7月1日に発表した税制改革案(2022年7月12日記事参照)の内容からも明らかなとおり、富裕層や主要産業の鉱業への増税を行い、中間所得層や貧困層への支援を強化する富の再配分が現政権の基本方針だ。首都圏州内の地下鉄やバスなどの公共交通網は、幅広い層の市民の移動手段として日常的に機能している。自らの支持基盤として期待される層からの強い反発を招きかねないこの値上げ問題に政府が着手するのは果たしていつになるのか、先行きは依然として不透明だ。
(佐藤竣平)
(チリ)
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