地下鉄運賃値上げをきっかけに反政府デモ拡大

(チリ)

サンティアゴ発

2019年10月29日

チリの首都サンティアゴの地下鉄運賃が30ペソ(約4.5円、1ペソ=約0.15円)値上げされると10月6日に発表された。それを受けて学生らを中心とする集団が翌7日から無賃乗車を繰り返すなど、値上げに反対するデモが広がっている。ピニェラ大統領やグロリア・フット運輸・通信相はデモを非難し、法に従って防犯カメラなどを駆使して無賃乗車した者を特定するとした(「ラ・テルセラ」紙10月17日)。

デモは17日から改札口を破壊するなど激化し、警察は催涙弾や放水でデモ隊に対抗したものの、勢いは収まらず、18日夜から全ての地下鉄路線が閉鎖された。これまでに地下鉄の全136駅中118駅が放火による全焼や部分的な焼損、駅構内施設の損壊などの被害を受け、車両も7台が放火、3台が破壊された。メトロサンティアゴの発表によると、被害総額は3億8,000万ドルに上るという。

地下鉄運賃値上げはデモのきっかけにすぎず

学生らによる地下鉄運賃値上げへの反発として始まったデモだが、国内の所得格差や高い失業率、年金制度、保険制度、電気料金値上げ、教育制度などに関する政府の政策に不満を募らせてきた層へも広がりを見せ、大規模なデモ隊による一部道路の封鎖などの事態も招いている。市内には大量の警官や軍部隊が配備された。

写真 アポキンド通りで行われたデモの様子(10月20日、ギャンブル ゲーム 無料撮影)

アポキンド通りで行われたデモの様子(10月20日、ジェトロ撮影)

写真 サンティアゴ中心地に派遣される軍部隊(10月21日、ギャンブル ゲーム 無料撮影)

サンティアゴ中心地に派遣される軍部隊(10月21日、ジェトロ撮影)

そうした混乱に乗じた一部集団が、バスやイタリア配電会社エネルのビルへの放火、スーパーマーケットやホームセンターで略奪や放火するなどしたことから、政府は19日にサンティアゴを含む首都圏州に緊急事態宣言を発令し、軍により夕方から早朝の外出禁止令が出された。

ピニェラ大統領は事態を収拾するべく、19日に地下鉄運賃の値上げ中止を発表したが、デモは沈静化せず首都圏州以外にも広がり始めたため、21日には新しい社会アジェンダ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとして年金制度、最低所得の保証、電気料金引き下げ、議員削減などに関する一連の措置を発表するまでになった。

(岡戸美澪)

(チリ)

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