英運輸相、2050年までの航空業界ネットゼロ達成に向けた戦略発表
(英国)
ロンドン発
2022年07月28日
英国のグラント・シャップス運輸相は7月19日、航空業界の2050年までのネットゼロ(ジェットゼロ)達成に向けた「ジェットゼロ戦略」を発表した。同戦略は主に「目標」と「原則」「手段」の3つで構成している。戦略は5年ごとに見直しを行い、進捗に基づいて取り組みを調整するとしている。
「目標」では、2050年のジェットゼロ達成に向けた中間削減目標を設定。二酸化炭素(CO2)換算で2019年に38.2メガトンだった排出量を2030年に35.4メガトン、2040年に28.4メガトン、2050年に19.3メガトンまで削減する目標を設定している。
「原則」については、目標達成に向けた取り組みの方向性を示しており、以下の3つを挙げた。
- 国際的なリーダーシップ:国際民間航空機関(ICAO)の取り組みなどを通じ、国際航空での排出への対処に向けた取り組みを主導する。
- パートナーシップを通じた実行:航空業界のあらゆる主体や異なるパートナーと協力し、ソリューションの開発、試験、実行、投資に取り組む。
- 機会の最大化:英国経済の成長加速や、新規雇用の創出、新産業の開発、エネルギー安全保障の増進に向け、ジェットゼロへの移行という機会を生かす。
「手段」に関しは、「システムの効率性」「持続可能な航空燃料(SAF)」「ゼロ排出航空」「炭素市場と温室効果ガス除去」「消費者への働きかけ」「CO2以外の排出への対応」の6つを示した。主な取り組みとしては、発表済みのものも含めて以下が挙げられる。まず、国内便とイングランドの空港を2040年までにゼロ排出化する目標を設定し、空港に対し最新技術の活用や効率的な航空ルートの策定支援のため、2022年度に370万ポンド(約6億680万円、1ポンド=約164円))を拠出する。SAFについては、2022年から2025年にかけて国内での生産工場の商業化や燃料検査の支援に1億8,000万ポンドを拠出する(2022年5月24日記事参照)。政府はまた、2025年までに国内で少なくとも5つの生産工場の建設を開始することにコミットしたほか、燃料事業者に対し2030年までにSAFの使用割合を少なくとも10%とすることを義務付けるとした。そのほか、「炭素市場と温室効果ガス除去」については、CORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)関連法の2024年までの法制化を目指すとしたほか、英国排出量取引制度(UK-ETS、注)の修正に関する意見公募を実施したことについて触れた。
(注)UK-ETSについては2021年7月12日付地域・分析レポート記事参照。
(山田恭之)
(英国)
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