英政府、大西洋を横断するネットゼロ航空計画を発表
(英国、米国)
ロンドン発
2022年05月24日
英国のグラント・シャップス運輸相は5月14日、大西洋を横断するネットゼロ航空に関する計画を発表した。2023年中に持続可能な航空燃料(SAF)のみを利用した民間航空機の試験飛行を米英間で行うとしている。運輸省は同日、この計画の達成に向け、航空関連企業を支援する基金も発表。イノベートUKと連携し、選考を経て2022年から2023年にかけて最大100万ポンド(約1億6,000万円、1ポンド=約160円)を提供する。6月12日まで関心表明(Expression of Interest)の期間が設けられており、拠点国を問わずに応募が可能となっている。
同省はSAFのみを利用した商用航空機の実現可能性検証のほか、燃料認証手続きと研究の加速につながるデータを収集するとしている。また、ネットゼロ航空の実現に向け、温室効果ガス(GHG)除去を可能にする手段の実証も目指すとした。同省によると、現在のジェット燃料の仕様ではSAFは燃料全体の重量の最大50%までしか使用できず、他の燃料と混合する必要がある。また、廃棄物由来の燃料を使用した場合でもネットゼロは達成できず、GHG除去技術と組み合わせる必要があるとしている。電気や水素を利用した航空機の場合はエンジンや機体の再設計が必要となるが、SAFの場合はそうした大きな変更は不要としている。
政府は2021年10月に発表したネットゼロ戦略の中で、SAF関連の産業開発支援に、1億8,000万ポンドを投じるとしている(英政府、ブラック ジャック ブラック)。12月には国内SAF生産プラント開発向けに発表した総額1,500万ポンドの補助金の対象機関リストを公表(運輸省の2021年12月6日付発表)。炭素の回収・変質を行うランザテックUK(Lanzatech UK)や持続可能燃料を開発するベロシス(Velocys)などが補助金を獲得した。
一方で、エネルギー関連コンサルティング企業エレメントエナジーの5月16日付報告書によると、政府が掲げる2050年までの航空業界のネットゼロ(ジェットゼロ)計画は、現時点で多くが展開準備ができていない技術的な解決策やSAFなどの改善の可能性を過大評価し依存するものであり、リスクを抱えている。同社によれば、空港の拡張政策の早急な見直しなど、航空需要の削減に向けた取り組みも不可欠とされた。
(山田恭之)
(英国、米国)
ビジネス短信 39007ab02b49fc22