カナダ政府、石油・ガス業界へのGHG排出枠設定に関する政策案公表
(カナダ)
トロント発
2022年07月27日
カナダのスティーブン・ギルボ環境・気候変動相とジョナサン・ウィルキンソン天然資源相は7月18日、石油・ガス業界への温室効果ガス(GHG)排出枠設定に関する政策案を公表した。
同国政府は2021年6月に「カナダ・ネットゼロ排出説明責任法」を施行して、2030年までに2005年比でGHGを40~45%削減することを目標として盛り込んだ(2021年10月15日付地域・分析レポート参照)。2021年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、主要産油国の中で初めて、石油・ガス部門へのGHG排出枠設定と削減を進めることを発表していた(2021年11月2日記事参照)。同部門のGHG排出量は2020年時点でカナダ全部門の27%を占め、目標に沿った大幅な削減が必要とされている。
18日に発表したディスカッションペーパーでは、排出枠設定に向け、(1)排出量に規制値を設定する排出量取引制度、(2)排出量の多い企業に対して炭素価格設定基準を変更し、排出量を上限(キャップ)に相当する水準まで削減する価格主導型のインセンティブを創出する制度の2案を提示した。関係者は2022年9月30日までディスカッションペーパーへの意見を提出することができる。
ウィルキンソン天然資源相は記者会見で「ネットゼロ経済における石油・ガスの需要は、最終的にはGHGゼロに近い状態で石油・ガスを生産できる地域に完全に集中することになる」と述べ、カナダの石油・ガス業界の競争力維持にはGHG削減が必要なことを強調した。
一方、発表を受け、主要産油州のアルバータ州のホイットニー・アイシック環境・公園相とソーニャ・サベージ・エネルギー相は同日付で「アルバータ州は、憲法で保護された資源開発能力に干渉しようとする連邦政府のいかなる計画も受け入れない。これらの天然資源は何十年にもわたってカナダ国民のために責任を持って管理されてきたものであり、その所有者は州だ」との声明を発表し、「連邦政府は排出量目標を達成するために一方的に行動することはできない」と反発姿勢をみせた。
カナダ政府は関係者の意見募集を経て、2023年早々にも石油・ガス排出枠の概要を明らかにする予定としており、アルバータ州政府の今後の動向が注目されている。
(飯田洋子)
(カナダ)
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