トルドー・カナダ首相、ネットゼロへ石油・ガス部門のGHG排出量上限設定と削減発表
(カナダ、デンマーク、コスタリカ)
トロント発
2021年11月02日
カナダのジャスティン・トルドー首相は11月1日、英国グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、)に出席し、遅くとも2030年までに火力発電用石炭の輸出停止を目指すとともに、主要産油国の中で初めて、2050年までのネットゼロに向けて、石油・ガス部門からの温室効果ガス(GHG)排出量の上限設定と削減を進めることを発表した。
さらに、国際的な気候変動ファイナンスへの貢献を通じて、途上国が石炭火力発電からクリーンな電力にできるだけ早く移行できるよう、気候投資基金(CIF)の「石炭からの移行促進プログラム」に最大10億カナダ・ドル(約920億円、Cドル、1Cドル=約92円)を投じるとともに、クリーンな代替エネルギーの開発と導入の支援を目的とした世界銀行とのパートナーシップ「エネルギーセクター管理支援プログラム」へ2,500万Cドルの資金提供を行うことも明らかにした。
トルドー首相は火力発電用石炭の輸出停止に関して、石炭火力発電所からのGHG排出を終わらせることは気候変動との闘いで世界が取るべき最も重要な手段の1つであり、カナダが既に実施している2030年までの国内の従来型石炭火力発電所の廃止に向けた取り組みや、石炭労働者とそのコミュニティーのクリーンエネルギー産業への移行を促す1億8,500万Cドル以上の投資の延長線上にあると説明した。石油・ガス部門からのGHG排出量の上限設定と削減については、科学や経済など各界の専門家で構成する「ネットゼロ諮問機関」へ助言を求めることで実現方法を探るとした。
今回のCOP26では、デンマークとコスタリカ政府が「石油・ガスを超える連合(Beyond Oil and Gas Alliance、BOGA)」を立ち上げ、化石燃料の生産を計画的にゼロにすることを他国に呼びかけて注目を集めているが、カナダをはじめとする主要生産国は、化石燃料を完全になくすのではなく、2050年までにGHG排出量をゼロにすることを目指して産業界と協力していくとしている(「グローブ・アンド・メール」紙11月1日)。アルバータ州の主要オイルサンド生産5社は連邦政府や州政府と協力して、2050年までにGHG排出量を正味ゼロにする目標を達成するための同盟を6月に結成している(特集:北米地域における環境政策の動向と現地ビジネスへの影響ブラック)。
トルドー首相は「気候変動対策は待ったなしだ。2015年以来、カナダは気候変動との闘いのパートナーとして尽力してきた。ネットゼロの未来に向けて、私たちは汚染を削減し、全ての人のためにクリーンな未来を築くための役割を果たす」と発言した。
(飯田洋子)
(カナダ、デンマーク、コスタリカ)
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