エネルギー安全保障に向けた電力市場改革で意見公募を開始
(英国)
ロンドン発
2022年07月22日
英国政府は7月18日、エネルギー安全保障を根本的に強化し、消費者の電力コストを削減するために電力市場設計を見直すことを発表し、意見公募を開始した。公募は2022年4月に発表した「エネルギー安全保障戦略」(2022年4月13日記事参照)での電力市場の包括的な見直しの一環。
政府は同日「電力市場整備に関する見直し」をリリースし、世界的なエネルギーコストの上昇への対応や、エネルギー安全保障のさらなる強化、よりクリーンなエネルギーシステムへの移行という複合的な課題への対応について見解を求めている。今回の見直しへの意見の公募は10月10日まで。
今回見解を求めている主な変更点は以下のとおり。
・需要が低い時や、特に晴れて風が強い時などに、より安く電力を利用するためのインセンティブを消費者に付与する。
・容量市場を改革し、よりクリーンで低コストのシステムを可能にする蓄電池設備など、カーボンニュートラル技術の利用を増やす。
このほか、ガス価格の影響を受けやすい電力価格について、安価な再エネ由来のコストメリットを消費者に確実に伝える仕組みの導入についても検討する。
電力市場のあり方については、関係機関からも報告が出ている。ガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)は7月8日にディスカッションペーパー「ネットゼロ・ブリテン」を発表。記録的な水準で変動するガス価格を受けて、高価なガス輸入から、低炭素発電などより安価で長期的なソリューションへの移行を加速する必要性は高まっているとし、卸電力市場の改革により、2050年までに年間100億ポンド(約1兆6,600億円、1ポンド=約166円)以上の節約を顧客に提供できる可能性があるとしている。
また、エネルギー事業者団体エナジーUKは、7月15日に報告書「英国の電力市場の将来」を発表し、将来の電力市場について「再エネ・低炭素発電能力の急速な拡大」「断続的な発電と変動する需要パターンを考慮できる運用効率、経済効率の高いシステム」「市場の非効率性への対応、プロセスの最適化、ネットワークの制約と混雑の最小化によるコスト削減」の3点の重要性を強調。同団体は今回の見直しを適切かつ時宜にかなったものだとしている。
(菅野真)
(英国)
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