米USTR、USMCA下の自動車貿易に関する報告書を議会に提出

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2022年07月04日

米国通商代表部(USTR)は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)発効から2年に当たる7月1日、USMCAにおける自動車物品貿易に関する報告書を連邦議会に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国の「USMCA実施法」は、USTRに対して2年ごとに、USMCAに関する自動車物品貿易の運用状況を議会に報告することを義務付けている。2022年2月には報告書作成に向けて、利害関係者からパブリックコメントを募集していた()。報告書は特に、北米自由貿易協定(NAFTA)から改定され、複雑化した自動車分野の原産地規則とその影響を中心にまとめている。ただし、あくまで利害関係者から寄せられた懸念や改善提案をまとめたもので、具体的な解決策は提示していない。報告書内でも、発効してからの年数が浅い点や、新型コロナウイルスのパンデミックおよびその後の半導体などのサプライチェーンの混乱、ロシアによるウクライナ侵攻といった外部要因により、USMCAの影響を十分に評価することは難しい、としている。結論部分でも、「利害関係者と協力して、USMCAの要求に関して分かりやすさを提供するとともに、不確実性を減少させる」と述べるにとどめている。一方で、近く動きが予想される点、将来的に検討される可能性がある点などについて、以下のとおり紹介している。

  • メキシコ、カナダと係争中の自動車原産地規則の解釈:メキシコとカナダが共同で米国を提訴している案件(注1)で、報告書では2022年後半に紛争解決パネルが裁定結果の報告書を公表する予定だとしている。また、国内の労働組合は米国側の主張を支持している一方、自動車メーカーはメキシコ、カナダ側の主張を支持しているとしている。
  • 代替スケジュール計画(注2)の維持・拡充:自動車・部品メーカーからの要望が多かったとしてコメント内容を紹介。特に、電気自動車(EV)のバッテリーの域内調達が少なくとも2025年まで困難なため、代替スケジュール計画の拡充が求められているとしている。
  • 中古車に関する原産地規則:USMCAでは中古車も新車と同じ原産地規則の適用を受けるが、利害関係者からはUSMCA発効前に製造された自動車にまで厳しい原産地規則を適用することに懸念が示されたとしている。この点、税関・国境警備局(CBP)が、いったん国外に輸出された米国製自動車が3年以内に、付加価値が加えられていない、また改良されていない状態で米国に輸入される場合は無関税になる点を説明したファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表している点を紹介している。

(注1)USMCAでは、完成車だけでなく、主要な自動車部品(コアパーツ)7種類についても、一定の域内付加価値割合(RVC)を超えていなければ、完成車の域内貿易について無関税を認めないとしているが、救済規定として7種類を1つのコアパーツとみなして全体でRVCを超えていれば、要件を満たしたと認めている。その後、そのコアパーツを完成車に組み込んだ際のRVCの算定について主張が分かれている。詳しい内容は

(注2)自動車原産地規則の順守に関し、自動車メーカーごとに一定の台数について期限的な猶予を与える例外的措置。

(磯部真一)

(米国、カナダ、メキシコ)

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