米NY市、低所得者向けの住宅建設計画発表、治安の安定を狙う

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月22日

米国ニューヨーク(NY)市は6月14日、低所得者層向けの住宅建設計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。エリック・アダムス市長は、2021年の市長選挙時点から治安改善を公約に掲げており、市長就任後は地下鉄で寝泊まりするホームレスへの移動依頼を行っていたが、そうした人々へ提供する住居の不足が問題になっていた。

NY市内の住宅供給は逼迫しており、その金銭負担も重い。NY市によれば、市内の空室率は4.5%と全国平均の5.8%よりも低く、家賃が月1,500ドル未満の住宅の空室率は1%に満たない。家賃の中央値は2,750ドルで、NY市内の賃貸住宅で暮らす人々の半数が収入の30%以上を家賃に費やしており、3分の1は収入の半分以上を家賃に費やしている、と分析している。また、住宅都市開発省によると、2020年1月時点でのNYでのホームレス数は約9万人で、新型コロナ禍を経てこの人数は増加しているとみられる。民間団体「Coalition for the Homeless」によると、NY市内のホームレスの人数は1930年代の大恐慌以来最高の水準に達しているとし、一時避難所で生活するホームレスだけでも2022年3月時点で約4万8,000人を超えている。また、路上で生活するホームレスの数はさらに多いとみられる。

こうした現状を受けて作成された計画は、ホームレスを経験したNY市民の協力を得たとされており、ホームレス問題と住宅供給の不安定性への取り組み、手頃な価格の住宅建設・保存などを柱に掲げる。具体的には、6月10日に議会で成立した1,000億ドル規模の2023年度予算(2022年2月15日記事参照)から220億ドルを拠出し、2030年までに1万5,000戸の支援住宅を建設するという計画を2年前倒しするといった方法で、安価で高品質な住宅の供給強化などを行っていくとする。一方で、計画は具体性が欠ける点も多く、どの地域にどの程度住宅を建設するかなどに関する記載はない。アダムス市長は会見で、どれぐらい住居をつくるのかといった質問をよく受けるとした上で「これには答えないので質問しないでほしい」「(重要なのは)できるだけ多くの人を入居させること」と述べた(「ニューヨーク・ポスト」紙6月14日)。

2022年2月にNY市の有権者を対象として行われた民間調査では、9割超が市内の治安悪化が深刻だと回答した(関連ブラック ジャック ルール)。また、2022年5月に同市内の主要企業160社以上を対象として行われた別の民間調査では、NY市でオフィス復帰が進まない要因として、街頭や地下鉄でのホームレスなどの増加を指摘する回答が最も多くなるなど(ブラック ジャック トランプ)、ホームレス問題から発する治安への不安はNY市の大きな社会問題となっている。NY市も地下鉄へ配置する警官の数を増やし、巡回を強化するといった対策を行っているが、今回の計画と合わせて、NY市の治安の改善に向かうか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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