IPEFではデジタル貿易のルール形成が急務、タイ米USTR代表
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
ニューヨーク発
2022年06月07日
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は6月6日、ワシントン国際貿易協会(WITA)とアジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)が主催した対談形式のイベントに登壇し、5月に発足した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」(関連ブラック ジャック アプリ)を含むバイデン政権の通商政策の今後の見通しについて語った。モデレーターはASPIのウェンディ・カトラー副所長が務めた。
タイ代表は、IPEFは伝統的な自由貿易協定(FTA)ではなく、貿易を含む包括的な経済的関与だと指摘した。参加国はIPEFの4つの柱(注)のうち少なくとも1つに参加する必要があると説明し、今後のスケジュールについては、数週間かけて参加国間で各柱の詳細を協議し、今夏までにより正式な会合を開きたいとした。その後は各柱の参加国がそれぞれのペースで議論を行い、可能なものから成果を出していくとの展望を示した。各柱の参加国を巡っては、ジーナ・レモンド商務長官が5月31日に行った記者向け説明会で「ほとんどの国がほぼ全ての柱に参加しても驚きではない」と語り、5月の関係閣僚会合で、各柱で取り扱う内容に関する協議を始めたと明らかにしている(通商専門誌「インサイドUSトレード」5月31日)。
USTRが担当する貿易の柱で早期に成果が期待できる分野として、タイ代表はデジタル貿易に言及した。参加国による交渉が始まる前に予断はしないとしつつ、経済の伝統的な側面に比べ、デジタル分野のルールが整っていないとして、国際的な議論を急ぐべきと主張した。IPEFの執行ルールに関しては、従来のFTAにある紛争解決制度を取り入れる可能性を否定しなかった一方、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」のように、参加国内の多様な主体の説明責任を追及できる制度も検討すべきと説いた。
IPEFにおける交渉項目について、バイデン政権は関税削減を含めない方針である一方、USTRが3月に公表した官報では「この時点では、関税障壁は扱わない」と記していた(2022年3月10日記事参照)。この記述を基に、将来的にIPEFで関税障壁を扱う可能性を聞かれたタイ代表は「米国の平均関税率は既に低く、米国が提供できるものは少ない」と応じた。その上で、IPEFが目指す強靭(きょうじん)で持続可能な経済に資する手段に目を向けると述べた。
質疑応答で、カナダがIPEFの創設メンバーになっていないことについて問われた際、タイ代表は、カナダや欧州諸国とはインド太平洋地域を巡る取り組みを互いに補強できるよう連絡を取り合っていると回答した。
(注)(1)公平で強靭性のある貿易、(2)サプライチェーンの強靭性、(3)インフラ、脱炭素化、クリーンエネルギー、(4)税、反腐敗。
(甲斐野裕之)
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
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