バイデン米大統領、銃規制法案に署名、28年ぶりに成立
(米国)
米州課
2022年06月27日
米国のジョー・バイデン大統領は6月25日、連邦議会が可決した銃規制を強化する法案「超党派のより安全な地域社会法案」(Bipartisan Safer Communities Act、S.2938)に署名し、成立した。米国で実質的な銃規制法案が成立したのは、殺傷力の高い半自動攻撃用銃器の製造などを規制した「1994年暴力犯罪規制および法執行法」(P.L.103-322)以来、28年ぶりとなる。
5月24日にテキサス州ユバルディの小学校やニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットで起きた銃乱射事件を受け、バイデン大統領は6月2日の演説で、攻撃用銃器の禁止や銃購入年齢の18歳から21歳への引き上げ、身元確認の強化を議会に求めていた。また、コネチカット州のキニピアク大学が6月8日に行った世論調査では、全米で銃購入時の所持年齢制限を21歳に引き上げるべきかという問いに「支持」が74%と大多数となった。米国が直面している緊急課題として、インフレ(34%)とともに銃乱射(17%)が2桁で高かった(米中間選挙、実写 版 ブラック)。
これまで、米議会の銃規制法案の動きは、規制強化を目指す民主党議員に対し、全米ライフル協会を支持基盤に持つ共和党議員の反対により頓挫を続けてきた。しかし、今回の法案では、上院のクリス・マーフィー議員(民主党、コネチカット州)、ジョン・コーニン議員(共和党、テキサス州)、キルステン・シネマ議員(民主党、アリゾナ州)、トム・ティリス議員(共和党、ノースカロライナ州)による1カ月近くの交渉の結果、6月21日に超党派の銃規制法案を完成させた。米上院は6月23日にS.2938法案の採決を行い、賛成65票、反対33票で可決した。民主党議員50人全員が賛成するとともに、共和党からは、上述のコーニン、ティリス2議員に加えて、ミッチ・マコーネル少数党院内総務(ケンタッキー州)を含む計15人が賛成に回った。翌24日には米下院で採決が行われ、賛成234票、反対193票で可決した。民主党議員は220人全員が賛成し、共和党からは14人が賛成票を投じた。なお、テキサス州選出の共和党議員では、24人のうち事件のあったユバルディを選挙区に持つトニー・ゴンザレス議員のみ賛成に回った。
今回成立した法案には、危険人物と見なした人物から銃器を取り上げることができる「レッドフラッグ法」の全州での制定や法執行に向けた5年間で7億5,000万ドルの財政支出や、家庭内暴力の有罪判決を受けた者による銃器購入規制の対象に結婚していないパートナーの追加、21歳未満の銃購入希望者に対する身元確認調査の強化、銃の不法な代理購入への刑事罰導入に加え、子供と家庭の精神衛生サービスや学校のメンタルヘルスプログラムへの支援などが含まれている。
一方、バイデン大統領が米議会に求めていた攻撃用銃器の禁止や銃購入年齢の18歳から21歳への引き上げは今回の法案には盛り込まれなかった。法案をとりまとめたマーフィー議員は6月21日に発表した声明で「この法案は、私が望む全てが含まれているわけではないが、30年にわたる政治の行き詰まりをようやく打開することができるだろう」と述べていた。バイデン大統領は署名に当たり、「この法律を成立させるために協力してくれた下院と上院の指導部と議員に感謝したい」と述べるとともに、「まだやるべきことはたくさんあるし、決して諦めるつもりはない」として、引き続き銃規制強化に取り組む姿勢を示した。
(中溝丘)
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