米USTR、パナソニック関連工場での労働権侵害の疑いでメキシコ政府に確認要請
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2022年05月23日
米国通商代表部(USTR)は5月18日、メキシコ北東部タマウリパス州レイノサ市にある自動車部品メーカー、パナソニック・オートモーティブ・システムズ(パナソニック)の工場で労働権侵害の疑いがあるとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表した。
RRMは事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きはUSMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。加盟国政府がそのような提訴を受け取った場合は、労働権侵害が疑われる事業所が所在する加盟国の政府に対し、事実確認を要請するか30日以内に判断する。今回の件は、メキシコの新興独立系労組の全国工業サービス労働者独立組合20/32運動(SNITIS)と米国の非営利団体リシンク・トレードが、パナソニックのレイノサ工場で団結の自由と団体交渉にかかる労働権が侵害されたとして、米政府に提訴したことが発端だ。
USMCAに基づくと、事実確認の要請を受けたメキシコ政府は調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に調査を完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は問題となっているメキシコの事業所からの製品輸入について、両国間で労働権侵害が解消されたことに合意するまで、最終的な税関での精算を留保することができる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、パナソニックのレイノサ工場からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示した。
USTRは2020年7月にUSMCAが発効して以降、RRMによる手続きを2回発動している。いずれもメキシコ内の自動車関連工場の案件だが、2件とも外部専門家で構成するパネルを設置する前に事案は解決している(2021年8月12日記事、関連ブラック ジャック トランプ)。タイUSTR代表は「これまでもメキシコ政府とはRRM案件の解決のために緊密に連携してきた。今回の件でも同様に協力できることを期待している」との声明を出している。
(磯部真一)
(米国、メキシコ)
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