欧州医薬品庁、9月末までにオミクロン株対応型ワクチン承認の見通しを発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年05月13日

EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は5月5日、記者会見でオミクロン株に対応した新型コロナウイルスワクチンが、9月末までには承認される可能性が高いとの見通しを明らかにした。

会見で、EMAのワクチン戦略の担当官は、新型コロナウイルスの感染状況は安定しているものの、世界的な感染拡大の収束には程遠いとし、新たな変異株の出現や冬季の感染の急速な拡大に備える必要があるとした。その上で、EU域内での秋以降の新たなワクチン接種の実施に向けて、EMAは遅くとも9月末までにオミクロン株に対応した新型コロナウイルスワクチンの承認勧告を目指すとした。

EUでは現在、米ファイザー・独ビオンテック、米モデルナ、英アストラゼネカ、英ジョンソン・エンド・ジョンソン、米ノババックスの5社が開発した新型コロナウイルスワクチンが承認されている。オミクロン株対応型の開発は、こうした承認済みのワクチンを改良するものだ。これらのワクチンのうち開発が進んでいるのは、mRNA型ワクチンであるファイザー・ビオンテックとモデルナのワクチンであることから、EMAは特にこの2社と作業を進めていることを明らかにした。いずれも臨床試験が実施中であることから、正確な承認時期を予測することは困難であるものの、秋までに承認される可能性がかなり高いとした。

また、EMAは、オミクロン株対応型ワクチンとは別に、より幅広く新型コロナウイルスの変異株やその他のウイルスにも対応し、かつ、より長期間にわたり効果が持続する次世代ワクチンの開発も支援しているとしたが、これらの次世代ワクチンの開発が年内にEMAの審査段階まで進む可能性は非常に低いとしている。

なお、EMAは欧州疾病予防管理センター(ECDC)との4月の共同発表においては、一般住民を対象とした2回目のブースター接種(通算4回目の接種)の実施は時期尚早とし、秋以降の実施の可能性を示唆していた(関連ハイパーブラックジャック)。また、欧州委員会も同月、加盟国に対して、秋以降の新たな追加接種の計画を策定するように求めていた(欧州委、ブラック ジャック ルール)。今回、オミクロン株対応ワクチンの承認の見通しが示されたことで、このまま承認が進めば、秋以降に実施が想定されている2回目のブースター接種に利用されるとみられる。

(吉沼啓介)

(EU)

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