首都リマでの戒厳令発令も、産業界や市民の抗議活動で即日撤回
(ペルー)
リマ発
2022年04月07日
ペルーのペドロ・カスティージョ大統領は4月4日深夜、国民向けのテレビ放送で一部の非正規公共交通機関労働者による暴力的なストライキ活動を受け(注)、4月5日の午前2時から午後11時59分まで首都リマならびに隣接するカジャオ憲法特別県に、犯罪防止目的の強制外出禁止令(戒厳令)を敷く大統領令第034-2022-PCM号を発令すると発表した。同大統領令は、2月2日付で大統領令第012-2022-PCM号によって導入された「犯罪防止非常事態宣言」(関連ブラック ジャック、3月22日記事参照)を改定するかたちで公布されており、医療(薬局の営業を含む)、水道、下水、電力、ガスや燃料、通信、公共清掃、葬儀、商品輸送などの生活に必須のサービスとその関連事業以外の、全ての外出を禁止した。
事の発端は、もとから燃料価格の高騰に反対していた正規の運送業界組合団体に加えて、肥料価格の高騰に反対する小規模農家団体が、リマ、ピウラ、イカ、フニン、クスコ、アレキパ、アジャクチョなどの各州で道路封鎖行動などのストライキ活動を3月28日から行っていたことだ。その一部が、フニン州のウアンカージョ県を中心に暴徒化した際、この混乱に便乗するかたちで、非正規組合が4月4日から5日かけてのストライキを宣言したところ、防衛省(MINDEF)が首都圏での大規模暴力活動の警報を発したため、戒厳令の発令に至ったとみられている。
これに対して、4月5日にはペルー議会を始め、ペルー経団連(CONFIEP)、ペルー工業協会(SNI)、ペルー輸出業協会(ADEX)、ペルー観光商工会議所(CANATUR)などの主要な業界団体はそれぞれ反対声明を発表。ペルー最大商工会議所であるリマ商工会議所(CCL)も、政府による措置は1日当たり10億ソル(約330億円、1ソル=約33円)の損失をもたらす、と同会議所ホームページで警鐘を鳴らした。また、リマ市各地では戒厳令に反対する多くの市民による大規模抗議活動が展開されたため、最終的にカスティージョ大統領は5日中に戒厳令の撤回宣言を行うに至った。
(注)主に違法営業タクシー(白タク)を中心とした、370の非正規交通機関団体の集合体である多種交通手段組合(UGTRANM)が、政府が交渉を進める正規運送業者組合とは別に、4月4日および5日に全国規模のストライキの実施を宣言。既に政府が時限減税措置を施した燃料価格以外にも、通行料金の値下げや「新型コロナ禍」における白タクの違反切符に対する特赦などを要求。一部は料金所の焼き討ちや、火をつけたタイヤでバリケードを作り交通を妨げるなどの妨害行動のほか、商店の略奪行為なども行っている。
(設楽隆裕)
(ペルー)
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