英国政府、電力・ガス系統管理を担う公的機関の設立を決定
(英国)
欧州ロシアCIS課
2022年04月13日
英国政府は4月6日、同国のエネルギーシステムのレジリエンス(強靭性)を高め、温室効果ガス排出ネットゼロへの移行を促進するため、新たな公的機関「フューチャーシステムオペレーター(FSO)」の設立を発表した。本件は2021年7月から9月にかけて、意見公募を実施していたもの()。実際の設立は、関係者との協議および法整備の後、遅くとも2024年中となる予定。
FSOは、送電大手ナショナル・グリッドの電力系統子会社ナショナル・グリッドESO(以下「ESO」)の役割を担い、既存のネットワークに水素などの新たな技術を統合して、英国のエネルギーシステム全体を管理する。ESOは、2019年にナショナル・グリッドグループから系統運用事業の中立化のため切り離されていたが、今回その機能を継承するFSOを公的機関として新たに設立する。ナショナル・グリッド・ガスの一部機能も移管され、ガスシステムの戦略的監視や長期計画なども担う。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けた世界的なガス価格高騰とエネルギー網への圧力により、消費者はコスト増に直面しており、英国政府は、国産エネルギーの確保および増産が急務としている。FSOを通じ、電力システムのバランスを保ち、家庭や企業への供給の強靭(きょうじん)性と安定性を確保する。
ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)省、ガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)、ナショナル・グリッドおよびESOは同日、本件に関する共同声明を発表し、共通の目標と設立に向けた協力にコミットメントした。
Ofgemにガバナンスコード監視の戦略的機能を付与
英国政府は併せて、Ofgemに対し、エネルギー会社のガバナンスコード(諸規則)監視という新たな戦略的機能の付与を決定。これまでコードの管理は、その種類に応じてネットワーク会社や業界団体などが分散して行っていたが、異なるコード間の調整が不足するなどの課題があった。コストを最小限に抑え、消費者を保護しつつ、排出ネットゼロのより柔軟なエネルギーシステムに移行するために、コードの管理および整備の面でより迅速に順応させる必要があるとして、FSOと併せて意見公募が行われていた。意見公募の結果をふまえ、コードの戦略的変更へより適切に対応するために、コードマネージャー(注)の選定と、ライセンス付与の権限をOfgemに与える。これによって、より柔軟性の高い規制環境を整えるとしている。なお、法整備などの諸準備が順調に進んだ場合、2023年ごろからの運用を予定している。
(注)コード変更の提案や変更の優先順位付け、変更プロセスの管理などを実施。Ofgemによって設定された戦略的方向性を実現する責任を負う。
(菅野真)
(英国)
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