フランス、ウクライナ情勢に対する経済レジリエンス計画を発表
(フランス、ウクライナ、ロシア)
パリ発
2022年03月18日
フランスのジャン・カステックス首相は3月16日、ウクライナ情勢がフランス経済に与える影響を緩和し、エネルギーおよび原材料のロシア依存から脱却することを目的とした「経済レジリエンス計画」を発表した(フランス政府ウェブサイト)。3月12日に発表した1リットル当たり15セント(ユーロセント)のガソリン価格の割引制度(2022年3月17日記事参照)の適用対象を天然ガスおよび液化天然ガス(LNG)に広げるほか、新たな企業支援措置を導入する。
具体的には、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰で、電気・ガスの燃料費が40%以上上昇し、かつ電気・ガスの燃料費が売上高の3%以上に達し、2022年に営業損失の計上が予想される企業に対し、企業規模やセクターを問わず、2022年末までの9カ月間、燃料費増加分の5割を国が補填(ほてん)する。また、新型コロナ危機下で導入した公的保証融資(PGE)の融資額の上限を売上高の25%から35%に引き上げ、一時帰休制度と税・社会保険料の納付猶予措置の適用を延長する。
影響が大きいセクター向けの支援措置として、7月末まで漁業用ディーゼル1リットル当たり35セントを助成するほか、農業分野でトラクターなど非道路用ディーゼル車に対する石油関連税(TICPE)の還付や家畜用飼料への補助金など合わせて約4億ユーロの支援を行う。土木・建設分野では、公共事業の落札済み案件について原材料のコスト増繰り入れを認めるほか、納期の遅延ペナルティを課さないとした。
エネルギー安全保障の確保に向けては、2027年までにロシア産石油・ガスからの依存脱却を目指し、化石燃料の消費削減とLNGの調達の多角化を進めつつ、バイオガスの生産増加をはじめ、再生可能エネルギーの拡大に努める。チタン、パラジウム、ネオンなど特定の重要原材料についてもロシアへの依存を軽減するため、リサイクル工場の建設などのプロジェクトに投資額の最大35%(大企業の場合は最大15%)の補助金を支給する。
ブリュノ・ル・メール経済・財務・復興相は同日、経済レジリエンス計画の財政負担について、2021年10月以降のガス規制料金引き上げの凍結(100億ユーロ)、電気規制料金の引き上げ幅の抑制(80億ユーロ)、エネルギー価格の割引制度(20億ユーロ)など、これまでの政策措置を含め総額250億~260億ユーロに達するとの見通しを示した。
(山崎あき)
(フランス、ウクライナ、ロシア)
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