米USTR、2022年の通商課題を報告、インド太平洋経済枠組み重視、対中関係では慎重姿勢
(米国、中国、ASEAN)
ニューヨーク発
2022年03月02日
米国通商代表部(USTR)は3月1日、「2022年の通商政策課題と2021年の年次報告」を議会に提出した(注)。2022年も「労働者中心の通商政策」を継続し、脱炭素化や強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築を推進するため、同盟・友好国と新たな通商ルールを策定する方針を掲げた。
USTRは2022年の通商政策課題として、既存および新たな通商枠組みの下で労働者の権利を強化すると記述した。優先課題の1つに、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の効果的な実施・執行を挙げた。USMCAが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRLM)」を活用して、2021年にメキシコとの間で労働権侵害に対処した事例(GMブラック ジャック 賭け、関連ブラック ジャック トランプ参照)が今後の取り組みの基盤となると指摘。また、2国間だけでなく、APECやWTOなど多国間の場でも労働者の権利を追求する姿勢を示した。
脱炭素化では、環境保護の水準を高めるという従来の取り組み以上に積極的な対策を講じる意向だ。米国とEUが2021年10月に合意した鉄鋼・アルミニウムをめぐる炭素排出と過剰生産問題に取り組む「世界持続可能鉄鋼取り決め」(米国、EUと鉄鋼・アルミ貿易で合意、追加21)について、気候変動と世界市場の歪曲(わいきょく)に同時に立ち向かう取り組みと評価。同志国に対し、米・EUとの協調を働き掛けていくとした。
中国との関係については、バイデン政権は長期的な視点で慎重に取り組むと記した。USTRのキャサリン・タイ代表は2021年10月、米中による第1段階の経済・貿易協定の実施状況について中国との対話に着手すると発表したが(2021年10月5日記事参照)、報告書では、拙速な対中措置は米国自身の脆弱(ぜいじゃく)性を生むと指摘している。中国の不公正な通商・経済慣行に対抗するには同盟・友好国との協調が重要として、世界のサプライチェーンからの強制労働の根絶などで協力するとした。そのほか、1974年通商法301条に基づく対中追加関税の適用除外手続きを再開したことに触れ、米国の労働者やビジネスへの影響を考慮し、今後も必要に応じて除外手続きを拡大する可能性を示した。
多国間関与では、バイデン政権が構想を練る「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」()を最初に掲げた。IPEFでは、(1)公平で強靭性のある貿易、(2)サプライチェーンの強靭性、(3)インフラ・脱炭素化・クリーンエネルギー、(4)税・反腐敗の各分野に取り組む。
USTRは友好国との貿易に関する取り決めの策定を主導する。同取り決めは、高い労働基準や環境面での持続可能性、デジタル経済での協力、競争政策、貿易円滑化などに関わる条項を含む見込みだ。IPEFについて、USTRはプレスリリースの中で、さらなる詳細を近く公表するとしている。バイデン政権はアジアへの関与を強化しており、3月28、29日にはASEANとの特別首脳会議をワシントンで開催する予定だ(ロイター2月28日)。
(注)1974年通商法に基づき、大統領は貿易協定に関する取り組みや、その年の政策方針について、毎年3月1日までに議会に報告を行う義務を負う。
(甲斐野裕之)
(米国、中国、ASEAN)
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