欧州委、シェンゲン協定圏内外の国境管理ルール見直しを提案
(EU)
ブリュッセル発
2021年12月15日
欧州委員会は12月14日、EUの多くの加盟国および欧州自由貿易協定(EFTA)加盟国間の自由な人の移動を確保するシェンゲン協定(注)に適用される国境管理規則の改正を提案した(プレスリリース)。
シェンゲン協定は、シェンゲン協定参加国の市民および居住者ならびに適法に入域した短期滞在者が、国境での出入国管理なく加盟国間を移動できる仕組みだ。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、シェンゲン協定加盟国間でも異なる国境管理体制を敷き、人の移動が制限されている。また、域外からの入域に対しては、EU理事会(閣僚理事会)が入域制限に関する勧告を行っている(関連ブラック ジャック トランプ)ものの、勧告には拘束力はなく、加盟国ごとに国境管理の内容が異なっているのが現状だ。こうした事態を背景に、シェンゲン域内での国境を越える移動に制限を設ける場合のルールの見直し、および域外からの入域に関する協調的な対応の制度化が求められていた。
シェンゲン域内の国境管理は最終手段と強調
まず、シェンゲン域内での移動については、EUでは約170万人が日常的に国境を越える労働者であることや、新型コロナウイルス対応に伴う国境管理がEU域内の物の移動、ひいてはサプライチェーンにも影響を及ぼしたことから、欧州委は、国境管理の導入は最終手段で、国内でのチェックで代替できる場合は国境制限を設けないことが原則だとしている。
その上で、予見できない緊急の事態への対応としての、域内での国境管理の導入期間を現行規則の2カ月から3カ月に延長、また予見可能な状況下での中期的な措置としての国境管理は現行規則の6カ月から原則として2年までに延長し、今回のようなパンデミックに対応できるようルールを実態に合わせる提案内容となっている。ただし、6カ月を越える期間の措置を設ける場合は、当該の加盟国にリスクアセスメント(影響評価)の実施を求めるほか、措置が18カ月以上に及ぶ場合は、欧州委が措置の必要以上に制限的でないかなどについて意見を出すなど、要件を厳格化する。
域外からのシェンゲン圏入域に対しては、今回の改正案ではパンデミックの経験から、EUとして拘束力のある制限措置を取ることができる内容となっている。具体的には、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がEU域外で感染拡大の恐れのあるウィルスや伝染病などを検知した場合、欧州委がEU理事会に対して、統一的な入域制限措置を実施規則として採択するように提案する。
規則案は今後、欧州議会およびEU理事会により審議される。
(注)シェンゲン協定加盟国は、ブルガリア、クロアチア、キプロス、アイルランド、ルーマニアを除くEU加盟国に、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインを加えた26カ国。
(安田啓)
(EU)
ビジネス短信 546233e82d8d46c0