OECD、世界経済見通しを改定、回復は継続もペースは鈍化の見通し
(世界)
国際経済課
2021年12月02日
OECDは12月1日、「エコノミックアウトルック(経済見通し)中間報告」〔プレスリリース(英語、日本語)〕を発表した。2021年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を5.6%、2022年を4.5%とした(添付資料表参照)。前回(2021年9月)の見通し(2021年9月22日記事参照)と比較すると、2021年を0.1ポイント下方に修正、2022年は据え置いた。
OECDは「世界経済の回復は続くが、成長速度は鈍化する」とし、不均衡が広がることへの懸念を示した。特に、新型コロナウイルスのワクチン接種率が低い低所得国や観光産業などの対人接触型産業における需要回復が遅れ、世界的な回復基調から取り残されるリスクを指摘した。また、成長速度鈍化の背景として、経済活動の再開に伴う需要の増加に対する供給の混乱、インフレ圧力の上昇・長期化、労働力不足などが挙げられた。エネルギー価格の高騰もリスク要因で、特に欧州を中心にガス価格が高騰し、貯蔵量が例年と比べて約3割下回っている。今冬は厳冬傾向の見通しで、さらなるコスト上昇やインフレ加速が懸念される。
また、オミクロン株などの変異ウイルスの出現が相次ぎ、先行きの不確実性が高まっていることにも触れた。引き続き、供給障害と労働力不足のリスクは顕在しており、特に、米国や欧州など先進国における納期の延伸が深刻との調査結果に言及した。
主要国・地域の2021年の成長率では、小幅ながら前回見通しからの下方修正が目立つ。米国は0.4ポイント減の5.6%で、国内のワクチン接種率に格差が生じ、依然として局所的なアウトブレークのリスクが残ることから、完全な正常化は遅れるとの見通し。中国は0.4ポイント減の8.1%で、貿易相手国の経済再開による輸出増で回復加速が期待されるが、不動産およびインフラ投資の鈍化が懸念材料となっている。ユーロ圏では0.1ポイント減の5.2%で、雇用市場においてパンデミック以前の水準までに回復がみられる半面、ここ数週間での感染再拡大、ガス価格の高騰などがリスクに挙げられた。
景気が上振れするシナリオとしては、有効なワクチン接種がより迅速に実施された場合、もしくはパンデミックにおいて家計や企業が貯蓄や現金保有高を蓄積する傾向が緩和した場合には、消費および生産能力が向上し、回復速度の加速が見込まれる。
他方、主な下振れリスクの要因としては、各国におけるワクチン接種プログラムの実施速度および既存のワクチンの有効性が、変異ウイルスの感染拡大を食い止めるのに不十分な場合が挙げられる。新たな行動制限、工場や港湾の閉鎖などが再度起こる可能性があり、貿易やサプライチェーンに影響を与え、さらに供給遅延や商品価格などの高騰を加速させる懸念が生じる。
(田中麻理)
(世界)
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