米連邦航空局、航空部門の2050年までのカーボンネットゼロ行動計画発表
(米国)
ニューヨーク発
2021年11月16日
米国連邦航空局(FAA)は11月9日、航空部門における2050年までのカーボンネットゼロ達成に向けた行動計画を発表した。バイデン政権は9月9日に2050年までに全ての航空燃料を持続可能エネルギー由来燃料(SAF、注)にする目標を発表しており(2021年9月13日記事参照)、今回の行動計画はこの目標も盛り込んで作成した。FAAによると、米国の航空部門でカーボンネットゼロ目標を設定するのは今回が初めてとなる。
同計画の柱として、100%SAF化に加え、現在と比べて燃費を最大30%改善させるための航空機エンジンの研究開発や、地上移動や離着陸時に使用する燃料効率の改善、空港施設の排出量の削減などが盛り込まれている。空港の排出量の削減に関しては、ジョー・バイデン大統領の署名で11月15日に成立した超党派インフラ法で、空港整備に250億ドルの予算を計上しているが(関連ブラック ジャック 勝ち)、FAAによると、空港設備の電化のために既に3億ドル以上を投資したという。また、SAFに関しては、ライフサイクル全体で温室効果ガス(GHG)排出量を従来の燃料と比べ少なくとも50%削減させることを条件としたSAF生産企業に対する税額控除などの支援策が上下院で審議中のビルド・バック・ベター法案に盛り込まれている。
米国で輸送部門が占めるGHG排出量は全体の3割程度、航空部門はそのうちの11%を占める。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席したピート・ブティジェッジ運輸長官は「(行動を起こさなければ)今後30年間で排出量は劇的に増加する」と述べ、「地上輸送と同様に航空輸送の将来も持続可能なものにするというのがわれわれの考えだ」と同計画の意義を訴えた(政治専門誌「ザ・ヒル」11月10日)。航空業界団体エアラインズ・フォー・アメリカは3月に、2050年までのカーボンネットゼロ達成のために政府と協力していくことを発表しており、今回の行動計画を機にこうした動きがさらに加速していくとみられる。
(注)Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとされるが、価格差も現時点では最大で10倍程度あるとされる。
(宮野慶太)
(米国)
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