バイデン米政権、2050年までに全ての航空燃料を持続可能エネルギー由来とする目標を発表
(米国)
ニューヨーク発
2021年09月13日
米国ホワイトハウスは9月9日、2050年までに航空部門(軍事・非軍事双方を含む)で使用される燃料を、全て持続可能エネルギー由来の航空燃料(SAF)(注1)に置き換えるとする目標を発表した。航空部門の温室効果ガス(GHG)排出量は、輸送部門の11%を占めている(注2)。対応しなければこの比率が上昇していく可能性があり、持続可能な航空部門の活動を実現していくために、企業などと協力してGHG排出量の削減に取り組んでいくとしている。
目標達成に向けて、まず2030年までに年間30億ガロンのSAFの生産・供給を目指す。現在、航空部門が消費する燃料は年間で約350億ガロンに達するが、一方でSAFの生産は年間450万ガロンにとどまっており、大幅な増加となる。また、これにより、2030年までにGHG排出量を通常時と比べて20%減少させることができるとしている。
具体的な方策として、現在上院で審議されている民主党提案の3兆5,000億ドル規模の投資計画の一環としてバイデン政権が提案している、ライフサイクルでGHG排出量を少なくとも50%削減させることを条件としたSAF生産企業に対する税額控除や、総額43億ドル規模のSAF生産・利用企業に対する資金支援、航空機の燃費効率を30%以上向上させる技術の開発を目標にした研究開発活動の促進などを挙げている。今回の発表を基に、今後数カ月以内に航空部門の気候行動計画を発表する予定としている。
また、声明の中で、航空会社の業界団体であるエアラインズ・フォー・アメリカの会員企業も、2030年までに年間30億ガロンのSAFを生産・利用可能にしていくための連邦政府やステークホルダーとの協業にコミットするとしているほか、フェデックスなどが参加する貨物航空会社協会(CAA)の会員企業も、同じくSAFの生産・利用を促進するともに、低燃費航空機の購入や電動短距離貨物機の利用などによって気候変動対策に取り組んでいくとしている。
(注1)Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとされるが、価格差も現時点では最大で10倍程度あるとされる。
(注2)2019年の輸送部門の排出するGHGは全体の29%。
(宮野慶太)
(米国)
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