バイデン米政権、2030年までに新車の半数以上をEV、FCVとする大統領令

(米国)

ニューヨーク発

2021年08月06日

ジョー・バイデン米国大統領は8月5日、2030年までに販売される新車(乗用車と小型トラック)の50%以上を、電気自動車〔EV(バッテリー式電気自動車とプラグインハイブリッド車)〕と燃料電池車(FCV)とする大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発令した。

米国で排出される温室効果ガス(GHG)のうち、交通・輸送部門が占める割合は28%で、そのうち乗用車と小型トラックの排出量が59%を占める(2018年時点)。大統領令に先駆けて発表されたホワイトハウスの声明によると、今回の大統領令による目標が達成すれば、2030年に販売される新車からのGHG排出量を2020年比で60%以上削減できることから、2030年までに全米からのGHGネット排出量を2005年比で50~52%削減したいとするバイデン政権の達成目標を後押しするとみられている。

自動車業界団体や環境団体、メーカーなど関係者は新たな目標値をおおむね歓迎した。ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスのデトロイト3は、2030年までの全新車に対するEVおよびFCV比率を40〜50%とする共同声明を発表。ただし目標達成には、連邦政府が消費者に対するインセンティブや包括的な充電ネットワークを含む、より効率的な電動化戦略をタイムリーに実現する必要があるとしている。

日系メーカーでは、トヨタが「われわれの役割を果たしていく。(今回の目標値は)環境に最適で、米国内の従業員、ディーラー、サプライヤー、その他の利害関係者43万6,000人の雇用を守ることになる」と述べた。ホンダは、2019年にフォードを含む4社とともに締結したカリフォルニア州との「クリーンカー枠組み協定」(米自動車環境規制の見直し、新たな21 トランプ値と統一21)として共同声明を発表。今回の目標値を踏襲するとした上で、「われわれはカリフォルニア州とともに気候変動の分野で引き続き業界をリードしていく」と述べた。また、消費者のEV需要を構築し、パリ協定を順守するには、全米統一の排出基準や、充電施設への継続投資、消費者インセンティブといった連邦政府による大胆な行動が不可欠、と付け加えた。

全米自動車労働組合(UAW)も、雇用維持を考慮した今回の目標値に賛同し、「(EV化において)米国は欧州、中国に後れを取っている。今回の発表は自動車産業とUAWメンバーにとって将来の仕事の確実性をもたらすものだ」と述べた。さらに、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事も、連邦政府と協力して環境対策に努める意向を示した。なお同州は、ニューヨーク州など11州(注)とともに、2035年までに販売される全新車をゼロエミッション車(ZEV)とする方針を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。

また、大統領令では、排ガス規制を所管する環境保護庁(EPA)と、燃費規制を所管する運輸省(DOT)に対し、2027年型車から少なくとも2030年型車の乗用車と小型トラックに関し、GHGを含む排出ガスと燃費の新たな基準値を制定し、2024年7月までに最終規則をつくることなどを指示した(添付資料表参照)。

大統領令においては、これら新基準値の制定に当たって、所管省庁であるEPAとDOTが協力して行うことや、自動車業界におけるイノベーションと製造の加速、国内サプライチェーンの強化、高給と福利厚生を提供する雇用の拡大を念頭に、商務省、労働省、エネルギー省との調整を行うことが指示されている。また、カリフォルニア州および同州の基準値を踏襲する州とも調整することや、労働組合、各州、業界、環境団体および公衆衛生の専門家などの利害関係者から広く意見を求めること、なども盛り込まれている。

(注)ニューヨーク州、マサチューセッツ州、メーン州、コネチカット州、ロードアイランド州、ワシントン州、オレゴン州、ニュージャージー州、ハワイ州、ノースカロライナ州、ニューメキシコ州

(大原典子)

(米国)

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