ブラジル自動車業界が脱炭素に向けたウェビナー開催、バイオ燃料に関心集まる
(ブラジル)
サンパウロ発
2021年08月27日
ブラジル自動車製造業者協会(ANFAVEA)は8月10日、「ブラジル自動車産業における脱炭素化への道」と題するウェビナーを開催し、国内自動車業界の二酸化炭素(CO2)排出量削減の可能性と限界について解説した(注1)。
ANFAVEAのルイス・カルロス・モラエス会長は冒頭、8月9日に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第6次評価報告書に言及し、欧州、米国、中国などと同様に、在ブラジルの自動車メーカーが電動化に向け取り組むことに理解を示した一方、ブラジルでは次の点に留意するべきと注意を促した。
- 2035年まで内燃機関搭載の自動車が市場の80%以上を占める可能性が高い点
- 電動車導入のためのインフラ投資が高コストなため、電動車の普及につながらず、結果的には中短期的なCO2削減効果には限界がある点
- 2035年までに、関連する設備を整えバイオ燃料の消費割合を増やした場合のCO2排出量の削減効果の方が大きい点
現在、ブラジル国内で実際に走行している電動車(乗用車・軽商用車)の割合はわずか0.086%だが、今回ANFAVEAの調査委託先となったボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の予測では、2035年にその割合は10~18%に増加するという。しかし、電動車向けのインフラ設備の導入コストは高く、車両自体も高価格で、2035年時点でも依然として内燃機関搭載の自動車が市場の80%以上を占める可能性が高いという。その結果、短中期的なCO2の排出低減効果には限界があると、BCGは調査レポートで述べている。
BCGはまた、自動車業界のサプライチェーン全体の経済活動から排出されるCO2に関し、電動車を主体とした場合とバイオ燃料車を主体とした場合の削減効果を比較している。それによると、積極的に電動車を導入し関連するインフラ設備を整えて2035年を迎えた際の排出量とそうでない場合を比較した場合、排出量の削減効果は約5%にとどまる。一方、バイオ燃料の消費割合を増やし、関連する設備を整えて2035年を迎えた際のCO2排出量は、そうでない場合と比較して約14%の削減効果が得られるとして(添付資料表参照)、バイオ燃料車による削減効果の優位性を指摘している。
ウェビナ―に登壇したマサオ・ウコンBCGマネージング・ディレクター&シニア・パートナーは、2035年までにバイオエタノールのシェアを現在の37%から61%に向上できれば、2035年にはCO2排出量を現在と比較して約10%削減できると説明した。
ANFAVEAのジョセフ・ヘンリー・ジュニオール技術担当理事は、ブラジルはバイオエタノール関連の技術を持っていること、さらに、国内の新車登録台数(乗用車・軽商用車)の80%以上はガソリンとバイオエタノールとの組み合わせで走行できる、いわゆるフレックス車で、現在37%にとどまっているエタノールの消費割合の拡大余地があることを強調した。あらためてバイオ燃料、特にバイオエタノールのようなクリーンエネルギーに注目が集まっている(注2)。
最後にモラエス会長は、長期的な視点で電動化は避けられない道としつつも、研究開発、メンテナンス技術者のトレーニング、充電スタンドなどインフラ設備への投資はもちろん、政府による税制インセンティブやCO2排出量の高い車両モデルに対する厳格な車両の検査も不可欠だ、と締めくくった。
(注1)調査を受託したボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が作成した資料を基に解説。
(注2)フォルクスワーゲン・ド・ブラジル(VW)も、バイオエタノールなどの国産資源を活用することを重要な戦略とみて、7月にバイオ燃料の活用技術を開発するR&D(研究開発)センターをブラジル国内に設立することを発表した(2021年7月21日記事参照)。
(エルナニ・オダ、古木勇生)
(ブラジル)
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