EU、2023~2027年の共通農業政策について暫定合意
(EU)
ブリュッセル発
2021年07月01日
EU機関の間での交渉が続いていた2023~2027年の共通農業政策(CAP)()について、EU理事会(閣僚理事会)は6月25日、欧州議会と暫定合意に達し、28日に開催された農水相理事会で合意内容を了承した。今後、残された技術的詳細を詰めた後、欧州議会とEU理事会での正式な承認手続きが行われる。
欧州委員会も暫定合意を歓迎し、フランス・ティーマーマンス執行副委員長(欧州グリーン・ディール政策総括、気候変動対策担当)は、暫定合意は欧州の農業従事者をより公正に支援し、環境に配慮した農業への「真の移行の始まり」と評した。次期CAPはEUの環境関連の法令に対応する内容となっており、欧州グリーン・ディールや関連政策の目標達成に貢献し、環境分野の規則の改正などによって更新される。さらに、より積極的に環境対策に取り組む農業従事者への支援として「エコ・スキーム」の導入を加盟国に義務付け、農業従事者への所得支援(直接支払い)については、農耕地の3%以上を生物多様性維持のために保全することを受給要件とした。
また、これまでの「基準順守」から「実績」を重視する方針へと転換し、EUレベルでより簡素なルールを定めつつ、加盟国の裁量を拡大し、それぞれの国の実情に合った支援を展開して環境目標の達成を目指す。各加盟国は、2021年末までに欧州委に対して戦略計画案を提出し、欧州委の承認を受ける必要がある。その他、関連するEU法令などで定められた労働条件を順守していない農家など直接支払いの受給者に罰則を科すことを規定し、農業関連のEUの法体系において初めて「社会的側面」が盛り込まれた。
農業団体は暫定合意を歓迎も、環境団体は懸念を示す
欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAは6月25日、3年に及ぶEU機関による交渉の暫定合意を歓迎したが、欧州グリーン・ディールなど他のEUの政策や各加盟国の環境分野の目標との一貫性を持たせることが重要とし、農業従事者にとってはまだ懸念点が多くあるとした。また、欧州青年農業者協議会(CEJA)は同日、各加盟国のCAP予算において3%以上を、40歳までの青年農家の直接支払い、就農や投資への支援に充てるとしたことを歓迎。その上で、若年層の就農の促進のためにも、各加盟国が戦略計画であらゆる手段を活用し、EUのガイドラインと国内法の間に一貫性を持たせることが必要だと指摘した。
一方、欧州各国の環境NGOのネットワーク組織である欧州環境事務局(EEB)は6月25日付の声明において、「エコ・スキーム」には各国の直接支払い関連予算の25%以上が充てられることになったが、十分ではないと失望感を示し、加盟国の説明責任も十分ではなく、加盟国の裁量拡大による環境対策の進捗への影響を懸念した。そして、次期CAPが今回の暫定合意の内容のまま承認されれば、EUの環境目標の達成への「重大な障害になる」とした。
(滝澤祥子)
(EU)
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