EUの次期共通農業政策の策定へ前進、「3者対話」へ

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月29日

EUの次期共通農業政策(CAP)について、EU農業担当相理事会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは10月21日に、欧州議会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは23日に、両者と欧州委員会が行う非公式交渉「トリオローグ(3者対話)」に向けて、それぞれの立場を表明した。EUの2021~2027年の次期中期予算計画の交渉が難航し、欧州委が次期CAP予算案を公表(海外ビジネスブラック ジャック)してからすでに2年以上が経過したが、EU予算の3割以上を占める重要政策の策定へ向けて大きく動き出した(注)。

環境対策をより強化する事業者が有利になる仕組みへ

農業部門は、EU全体で排出される温室効果ガスの1割を占めることや、農薬や化学肥料の使用などが環境団体から繰り返し批判されてきたが、EU理事会、欧州議会はともに、環境対策の強化と成果を重視することを鮮明にしている欧州委と同じ立場を取った。例えば、農業事業者への所得支援(直接支払い)の受給要件を見直し、農業事業者に対して現行以上の環境への取り組みを義務として求める。また、基準を上回る環境に配慮した対策を行う農業事業者に対しては、「エコ・スキーム」として追加で所得支援をすることとした。「エコ・スキーム」への予算配分について意見は異なるものの、環境対策に積極的な農家への支援がより手厚くなるようにした。また、大規模事業者に有利とされていた直接支払いに上限を設けることにも同意し、特に欧州議会は、直接支払いに係る予算の少なくとも6%を中小規模事業者への支援、4%を青年農家支援へ充てることを提案した。この青年農家支援に関する提案は欧州委の提案の2倍の数字となり、欧州青年農業者協議会(CEJA)は10月23日付声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで高く評価した。

加盟国がその国の農業の実態などに合った対応ができるように、その裁量を拡大することも今回の改革のポイントだったが、理事会は「エコ・スキーム」の実施について2年間の試験期間を設けるなど、環境目標の達成を重視してさまざまな柔軟性を認めた。一方、欧州議会は、裁量の拡大により公正な競争が阻害されてはならないと注文を付けた。

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECAは10月16日と21日に声明を発表し、EU理事会、欧州議会のそれぞれの議論内容は「完全ではないものの、現時点で農業事業者にとっては最善の妥協点」と評価し、次期CAPの速やかな策定のため、今後のトリオローグが協調的に進展することを要望した。

(注)現行のCAPは2020年12月31日に終了するが、EU理事会と欧州議会は2020年6月、2021年1月1日から少なくとも2年間は移行期間を設けて、現行のCAPに基づくルールを適用することで合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(滝澤祥子)

(EU)

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