研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」、計画公募を6月22日開始
(EU)
ブリュッセル発
2021年06月18日
欧州委員会は6月16日、2021~2027年に実施されるEU研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」のうち、2021~2022年の主要部分の詳細をまとめた事業計画採択を発表した。計画は3月に発表した戦略計画(EU研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」、オンライン)に従った内容で、7カ年度で総額955億ユーロ(名目額)のうち147億ユーロの研究助成を決定した。これに伴い、支援対象とする研究計画を選定するための公募の第1弾を6月22日に開始する。
欧州委によると、採択された事業計画の40%以上に相当する約58億ユーロが、クリーンエネルギーや持続可能なモビリティーを推進する技術、循環型経済に適合する農業・食品技術など、欧州グリーン・ディール政策に関連する研究に分配される。また、約40億ユーロがデジタル化推進に活用され、例えば、ヘルスケアやメディア、文化など各産業のデータを活用した研究とイノベーション創出を支援する。その他、医療システムの現代化やワクチン開発能力強化といった新型コロナウイルス危機に直接的に対応する事業にも約19億ユーロを割り当てるとした。
一部の研究分野では「戦略的」な国際協力を志向
事業計画採択の発表で欧州委は「ホライズン・ヨーロッパは基本設定として(by default)、世界各国に開かれている」とし、原則として前回の支援枠組み「ホライズン2020」と同様に、域外国の研究機関や企業も参加することができると説明した(ブラック ジャック トランプ)。他方、前回の支援枠組みにはなかった仕組みとして、ホライズン・ヨーロッパでは、一部の研究プログラムに関して、EUの戦略的な資産、利益および自律性を確保する目的、安全保障上の観点から、EU域内で設立された法人のみ、またはEU域内に加えて指定した特定の第三国に設立された法人のみに参加対象を限定している(注)。欧州委が産業戦略の柱に位置付ける「開かれた戦略的自律性(open strategic autonomy)」(欧州委、ブラック ジャック)を反映した修正といえる。
欧州委のマリヤ・ガブリエル委員(イノベーション・青少年担当)は記者会見で「制限の対象は、21の活動分野に限定しており、研究プログラムの95%は域外からの参加者にも開かれている」とし、ホライズン・ヨーロッパが国際的に開かれた支援枠組みだと強調した。制限の対象分野の詳細は引き続き各加盟国と検討を進めているとし、明言を避けた。
(注)指定した特定の第三国(associated countries)はホライズン・ヨーロッパ設立規則第16条に定義。参加対象を限定するプログラムの詳細は同第22条5項に定義されており、EU域内あるいは指定された特定の第三国で設立された現地法人であっても対象外となる場合もある。
(安田啓)
(EU)
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