欧州委、新型コロナ治療薬の開発から共同調達に向けた包括的な戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年05月10日

欧州委員会は5月6日、新型コロナウイルスの治療薬の開発と共同調達に向けた戦略を発表した。欧州疫病予防管理センター(ECDC)によると、5月7日時点で、EUおよび欧州経済領域(EEA)の成人人口の3割強が少なくとも1回のワクチン接種を完了しており、欧州委も域内の成人人口の7割接種の達成目標を従来の9月から7月に前倒し(2021年4月28日記事参照)、EUのワクチン戦略は成功していると強調している。

ただ、新型コロナウイルスへの対応はワクチン接種だけでは十分でなく、新型コロナウイルスの後遺症の治療を含め、安全で効果的な治療薬の選択肢を増やす必要があるとし、今回の戦略は、資金提供や加盟国間の調整などを通じて、治療薬の開発、生産、調達の各段階でEUレベルでの支援を強化するものだ。新型コロナウイルスの治療薬として欧州医薬品庁(EMA)が承認しているのは、現時点ではレムデシビルのみだが、2021年10月までに新たに3件、可能であれば2021年末までにさらに2件の承認を目指すとした。また、承認申請の前段階となる逐次審査(ローリングレビュー)も、有望な治療薬7件について、2021年末までに開始したい意向を示した。

域内での開発から生産まで、あらゆる段階で支援強化

具体的な支援策としては、研究開発においては、既に発表済みの9,000万ユーロの資金提供に加えて、「欧州保健緊急事態準備・対応局(European Health Emergency Preparedness and Response Authority:HERA)」(関連ブラック ジャック トランプ)の設立準備の一環として、有望な研究プロジェクトとその開発状況を把握するための、EMAや加盟国当局に民間の関係者を加えたプラットフォームを7月までに設置する。また、効果的で迅速な支援を実現するために、有望な治療薬の候補10件と、特に有望なもの5件を、6月までに選定する。

臨床試験においては、EUレベルの実施には加盟国での承認が必要となることから、こうした各加盟国の手続きを調整するとともに迅速化するために、合計700万ユーロの資金提供を行う。

生産においては、医薬品の原薬などのEU域外からの輸入への依存が指摘されていることから(欧州委、ブラック ジャック)、EUレベルでのサプライチェーンの全体像の把握を急ぐとともに、域内での生産拡大に向け、関係事業者の仲介イベントを7月以降に実施する。また、EU域内での生産支援として、4,000万ユーロを提供する。

調達に関しては、欧州委は一部の加盟国を代表して、レムデシビルの共同調達を既に2020年10月に実施しているが、現在EMAでの審査が進む3件の治療薬に関しても、同様に共同調達の準備を進めている。さらに、そのほかの未承認の有望な治療薬に関しても、事前購入合意などの締結を検討している。

(吉沼啓介)

(EU)

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