欧州委、新型コロナ変異株への対応策を発表
(EU)
ブリュッセル発
2021年02月18日
欧州委員会は2月17日、新型コロナウイルス変異株の脅威に備える対策を取りまとめ、発表した。対策は変異株の検出手法や、ワクチンの開発から承認、生産、数量の確保、普及に至るまでをカバーする総合的な内容となっている。欧州委としては今回の対策を、将来的な「欧州保健緊急事態準備・対応局(European HealthEmergency Preparedness and Response Authority:HERA)」設立に向けた準備段階だと説明している。
製薬会社との事前購入合意の「アップデート」も視野に
一連の対策は主に、研究開発の推進、行政手続きの迅速化や規制の見直し、ワクチン生産と確保の強化という3領域に整理できる。研究開発では、研究開発支援枠組みホライズンプログラム(2021年2月4日記事参照)から1億5,000万ユーロを優先的に割り当てるなどの予算措置を講じるほか、EU加盟国間およびスイスやイスラエルなど周辺国と協力して臨床試験結果を共有するネットワークを構築するとした。行政手続き・規制については、承認済みの既存ワクチンをベースにした改良の場合に、欧州医薬品庁(EMA)がファストトラックで承認を行う制度を整備する。また、企業のワクチン開発・生産の協業を促進すべく、競争法のガイドラインも見直される予定だ。
ワクチンの生産と確保では、欧州委は変異株に対しても、製薬会社との事前購入合意の締結を進めるこれまでの方針を継続するとともに、既存の合意が変異株に対応するワクチンをカバーするように必要な見直しを行っていくとした。同時に「今後の事前購入合意締結や既存合意のアップデートでは、これまでの教訓を生かして、実現可能な時間軸で、EU域内でワクチンを生産し供給できる能力を示す、詳細で信頼に足る計画を提示すること」を製薬会社に求めていくとした。さらに「EUの安全基準を満たせば、必要に応じてEU域外からの調達を検討することを排除しない」とも言及した。背景として、2021年に入り、事前購入合意を締結した製薬会社が相次いで供給の遅れを発表し、EU域内のワクチン調達に混乱が生じたことが挙げられる(ブラック ジャック カード)。
同じく2月17日に欧州委は、米国のモデルナとの間で最大3億回分のワクチン供給を可能とする事前購入合意を締結すると発表した。同社とは既に1億6,000万回分の事前購入に合意しており、これに追加する契約となる。欧州委によると、EUはモデルナを含む6つの相手先とのこれまでの事前購入合意で、計26億回分のワクチンを確保した。
(安田啓)
(EU)
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