米財務省、徴税強化策を公表、1万ドル以上の暗号資産送金に報告義務

(米国)

ニューヨーク発

2021年05月24日

米国財務省は5月20日、今後の徴税強化案を説明した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。バイデン政権の成長戦略である「米国雇用計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2021年4月5日記事参照)と「米国家族計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(関連ブラック クイーン ブラック)では、企業や高額所得者への徴税漏れへの対応強化を掲げており、今回の報告書でその具体策を示した。対策の実施により、今後10年で約7,000億ドルの税収増を見込んでおり、両計画で4兆ドル規模となる支出の財源に充てる。

報告書では、徴税漏れによる税収減は2019年に約6,000億ドルとなり、このまま対処しなければ今後10年間で約7兆ドルに達するとして、徴税強化の必要性を訴えた。また、賃金への課税は99%捕捉できているのに対して、賃金以外の不透明な収入の課税捕捉率は45%にとどまるとし、公平性の観点から改善が必要としている。具体的な徴税強化の方策としては、(1)内国歳入庁(IRS)に今後10年間で800億ドルの追加予算を配分(年率10%程度のペースでの予算増加)、(2)老朽化した税務管理システムの刷新、(3)納税を回避する者に対する罰則の強化などを提案している。特に(1)の予算拡充については、職員を約8万7,000人増員し、税務執行担当職員を少なくとも5,000人採用するとしている。

また、今回の報告書には、暗号資産(仮想通貨)について、市場価値1万ドル以上を送金する場合のIRSへの報告義務も盛り込まれた。報告書は、暗号資産の時価総額は約2兆ドルに達し、市場拡大に伴って暗号資産取引に関係する脱税などの違法行為が重大な問題になっていることを指摘。今後10年間で暗号資産取引の存在感が増していくとして、対策の必要性を訴えた。

暗号資産に関連して、米国連邦準備制度理事会(FRB)は20日、「デジタルドル」の発行についての論点整理を今夏に行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。ジェローム・パウエルFRB議長は声明で、中央銀行が発行するデジタル通貨は「現金や民間のデジタル通貨の代替物ではなく、補完物」として、慎重に検討していく姿勢を示した。「デジタル通貨」の検討は中国や欧州などでも進んでおり、諸外国との検討とあわせてFRBが「デジタル通貨」をどのように位置付けるのか、また急速に普及が進む暗号資産に関し、今後どういった規制が検討されていくかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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