2021年3月のCPIは前年同月比16.2%の上昇
(トルコ)
イスタンブール発
2021年04月14日
トルコ統計機構(TUIK)の発表(4月5日)によると、2021年3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比16.19%となった。国内生産者物価指数(D-PPI)上昇率も、原材料などの国際商品価格の上昇の影響を受け、31.20%だった。
3月のCPI上昇率の前年同月比を部門別にみると、商品部門は17.81%、サービス部門は12.56%となった(添付資料表1参照)。前月比では、商品部門の中で最大の構成比(23.29%)を占める「食品・飲料」は、生鮮果物野菜の価格が抑えられたこともあり、物価上昇の減速傾向がみられた。「主要商品」の中では、「衣料品・靴」がわずかに上昇した。サービス部門では、政府が3月に一時的に新型コロナウイルス防止策の規制緩和を進めたこともあってか、「ホテル・レストラン」が上昇し、中でも「ケータリング」の上昇が著しかった。また「通信」は、特別通信税(通話、インターネットなど)の引き上げ(注)が押し上げ要因となった。
国内生産者物価指数(D-PPI)上昇率も、通貨トルコ・リラ下落の影響に加え、基礎金属、原料、化学品、繊維、ゴム・プラスチックなどの商品価格の国際的な上昇もあり、為替のコストプッシュ圧力が続いている(添付資料表2参照)。現地報道によれば、ここ数カ月の中国やインドなどの経済再開・需要増により、原材料不足や原材料の輸入価格上昇が著しく、生産コストの上昇や商品価格の上昇を招いているとしている。
トルコ中央銀行のデータによると、ナージ・アーバル前総裁解任後(2021年3月26日記事参照)の1週間で、国際投資家がトルコの国債と株式を19億ドル以上売却し、トルコ・リラは約11%の下落となった。新たに任命されたシャハブ・カウジュオール総裁は、4月1日に行われた経済専門家とのオンライン会議で、金融引き締めを継続し、インフレ率が長期的な低下をみせるまでは、政策金利をインフレ率より高めに維持するとし、中銀の金融政策に変わりはないとした。このため、4月の金融政策会議では政策金利は19%で据え置かれると予想されている。
中銀総裁の交代に起因する混乱に加えて、政府発表の統計数値と市場の見解には乖離がみられる。TUIKの発表と同時に発表された独立調査機関ENAグループの調査によると、3月のCPIは前月比で3.36%、算出開始(2020年9月)以降で27.89%の上昇がみられるという。世論調査会社メトロポールが3月に行った調査でも、回答者の約半数が40%以上の物価上昇を体感するとしており、20%以下と回答したのは5.5%にとどまる。5月以降は、前年のベース効果である程度の収斂(しゅうれん)が見込まれるが、現状において中銀の年間目標9.4%は非現実的と指摘されている。
(注)特別通信税率は2月29日付で7.5%から10%に引き上げられた(官報)。
(中島敏博)
(トルコ)
ビジネス短信 5092cbc911e8c52f