アーバル中央銀行総裁を解任
(トルコ)
イスタンブール発
2021年03月26日
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は3月20日、ナージ・アーバル中央銀行総裁を在任期間約5カ月で解任した。この措置を受けて、エルドアン政権の経済運営に対する不透明感が高まり、通貨リラ売りが加速し、対ドルで一時15%の下落を見せた。また、株式や債券市場も急落した。リュトフィ・エルバン国庫・財務相は22日、インフレ抑制が優先課題であることに変わりはなく、目標達成に向けて財政面でも金融政策を支援するとしたが、市場の不安感は払拭(ふっしょく)されていない。
2020年11月に就任したアーバル前総裁は18日に200bpの利上げを実施し、政策金利(1週間物レポ金利)を17%から19%に引き上げたばかりで、金融引き締めに対する積極的な姿勢が市場の好感を得ていた。与党・公正発展党(AKP)は同氏の解任の背景について、金融政策の合理的運用ができなかったためと説明し、利上げが要因と示唆したと報じられている。
エルドアン大統領はこれまで、「金利を引き下げれば借り入れコストが下がり、物価も下がる」として、利下げを要求してきた(注)。新たに任命されたシャハプ・カウジュオール新中銀総裁は「インフレ抑制に向け、金融政策ツールを効果的に運用する」との声明を21日に出したが、エルドアン大統領と同様に金融引き締めに批判的な立場を取っていることから、今後利下げや金融緩和を推進する可能性がある。市場では、4月15日に予定されている金融政策委員会で300bp規模の利下げを予想する声があるほか、資本規制を導入するリスクの高まりも報じられている。トルコの現地紙(3月22日付)によると、ソシエテ・ジェネラルは、トルコの金融政策への信頼性は失われたとし、資産家のリラ離れが加速するとの見解を示し、2021年度末のトルコ・リラの対ドル為替予測を2月時点の6.2リラから9.3リラに修正した。
(注)エルドアン大統領は、価格を監視し、金利を下げればインフレ率も下がるという、一般的な経済理論には反する主張を展開している。
(中島敏博)
(トルコ)
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