エストニアで新政権発足、初の女性首相が誕生
(エストニア)
ワルシャワ発
2021年01月28日
エストニアで1月25日、カヤ・カラス党首が率いる改革党と中央党の2党による連立政権が発足し、カラス首相による新内閣は翌26日にケルスティ・カリユライド大統領から正式に任命を受けた。これまで政権を維持してきた、中央党党首のユリ・ラタス前首相が中央党の汚職疑惑の責任を取るかたちで1月13日に辞任していた。新型コロナウイルス対策や、経済の立て直しを急ぐため、異例のスピードで新政権が誕生した。カラス首相はエストニアで初の女性首相となった。
カラス新内閣は、首相と閣僚14人による計15人の新体制となり、改革党と中央党はともに7ポストに閣僚が就いている。新政権の主な政策方針としては、新型コロナウイルス対策に加え、ヘルスケア改革、社会保障、研究開発・イノベーション、インフラの近代化およびビジネス環境の整備などが挙げられている。また、ラタス前政権が進めていた、同性婚を不可能にするための憲法改正を問う国民投票については白紙に戻した。
改革党は2019年の選挙で最大議席数を獲得したものの過半数には届かず()、それまで政権を率いていたラタス前首相が政権を維持するために、ポピュリスト党である保守人民党と祖国党との3党連立を組んだため、野党側の立場にあった。今回の政権交代においての大きな変化は、保守人民党が与党から外れたことだ。ラタス前政権時には、同党に数々の問題発言があり、首相だけではなく、カリユライド大統領も火消し役に回ることが多かった。
また、連立政権の交渉過程では、「政治とカネ」の問題も大きく取り沙汰された。1月21日付「Postimees」によると、ラタス前首相が辞任するきっかけとなった、中央党幹部らによる汚職疑惑は検察当局が現在、捜査中だ。汚職疑惑に揺れる中央党と連立を組む決断をした改革党には、汚職を正当化しかねないとの批判の声も上がっている。これらの批判に対し、カラス首相は首相就任前の1月21日のエストニア公共放送「ERR」でのラジオインタビューにおいて、改革党は中央党を擁護するつもりもなく、中央党は自身で問題を対処するべきだと語った。改革党は、単独では過半数の議席を満たすことができないため、他の政党と連立を組まざるを得ず、政策の隔たりから、中央党以外の党と連立を組むという選択肢がなかったという事情もある。
(吉戸翼)
(エストニア)
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