WTO事務局長、最終選考でもコンセンサス形成できず選出は延期
(世界)
国際経済課
2020年11月09日
WTOは11月6日、9日に開催予定だった一般理事会を延期すると発表した。同一般理事会では、次期事務局長を選定する予定になっていた。ウォーカー一般理事会議長は、延期の理由として、新型コロナウイルス感染症の拡大を挙げた。スイスのジュネーブは11月1日に、感染再拡大よる緊急事態宣言を発令しており(関連ブラック ジャック 勝ち)、対面での会議開催が難しい状況にある。会議の再開時期については、「追って通知するまで延期し、その間に協議を継続する」としている。
アゼベド前事務局長が2020年8月末をもって退任し、7月以降、後任の選考手続きに入っていた。事務局長ポストが2カ月間空席となったものの、選考プロセスは当初の予定どおり進んだ(2020年8月31日記事参照)。トロイカ体制の下に行われたWTO加盟国による非公式協議で、8人いた候補者は1次選考で5人に、2次選考で2人に絞られていた(添付資料表1、表2参照)。ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏(ナイジェリア出身)か、ユ・ミョンヒ氏(韓国出身)のいずれの候補が事務局長に選出されても、WTO初の女性局長となる。
本来であれば、最終選考でどちらかの候補に支持が集約され、その後の一般理事会でWTO加盟国による全会一致の承認を経て、正式に新事務局長として職務を開始するプロセスをたどる。加盟国代表団は、選考の意向を個別に非公式に伝達するため、どの国が誰を支持したのかは基本的に対外非公開だ。一方で今回は、唯一、米国がユ・ミョンヒ氏支持を名確に表明し、コンセンサスが形成できていない。事務局長の選出は多数決では決められないため、1カ国でも反対があれば、そこで選考は止まる。なお、米国大統領選挙の結果にかかわらず、トランプ現政権が通商政策を少なくとも当面管轄することから、ユ・ミョンヒ氏支持の姿勢は変わらず、それも今回の一般理事会延期につながった、との観測もある。
前アゼベド事務局長や、その前のラミー元事務局長の選考の際も、途中で先行プロセスに異議を唱える加盟国はあったものの、基本的に最終選考までにコンセンサスに至っていた。加盟国の支持が割れた過去の例として、3~4代目の事務局長任期を通常の4年から6年に延期し、前後3年ずつをマイケル・ムーア氏(ニュージーランド出身)とスパチャイ・パニチャパック氏(タイ出身)が務めたことがある。
(吾郷伊都子)
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