スタートアップの欧州決勝大会、秘匿性の高いコミュニケーション・アプリ優勝
(欧州、チェコ)
プラハ発
2020年10月29日
スタートアップ・ワールドカップ&サミット(Startup World Cup & Summit)欧州決勝大会が10月14日、プラハで開催された。チェコでの決勝開催は2019年(関連オンライン ブラック ジャック)に続いて2度目。今回は新型コロナウイルスの影響で完全オンラインでの開催となった。欧州諸国の地域ラウンドで優勝した企業が参加する大会で、優勝者には賞金50万ドルに加え、2021年5月21日にサンフランシスコで開催される世界決勝大会の出場権が与えられる。
今回は11社が決勝に勝ち進み、ルクセンブルクのハイサイド(HighSide)が優勝を飾った。同社は暗号化の機能を取り入れた秘匿性の高いコミュニケーション・プラットフォームを提供、データが流出してもユーザー側でしか復号できないエンドツーエンド暗号化を使用した技術により、従来のSSL/TLS(注1)以上に高いセキュリティーを実現し、オンライン ブラック ジャック漏出や不正アクセスなどを防ぐ。マイクロソフトチームズとのチャネル・パートナーシップ契約と汎用(はんよう)性の高さから、売上高の増加が見込まれており、2020年第4四半期(10~12月)の売上高は第3四半期(7~9月)の約2倍、150万ドルと予想されている。
2位には、英国の医療系企業のアイロフ(iLoF)が選ばれた。アルツハイマー病のバイオマーカー(注2)のクラウド・ライブラリーを構築することで、製薬治験や臨床試験のコストと時間の削減を可能とする。同じく医療関連では、前日に開催されたV4(ビシェグラード4カ国:スロバキア、チェコ、ハンガリー、ポーランド)地域大会で勝者となったスロバキアのグライカノスティクス(Glycanostics)が前立腺がんの生検の必要性の診断を助けるソリューションを提案した。
3位には、チェコの24ビジョン(24 vision)が入賞した。同社は自動車のように多数の部品で構成される製品を包括的に、人工知能(AI)を活用して品質検査を行うシステムを開発している。このシステムは既にチェコ国内の現代トランシスと現代モービスの工場で使用されているほか、シュコダ・オートやフォルシアなどでも導入がテストされている。
(注1)不正アクセスを防止するデータの暗号化プロトコルで、サービス・プロバイダーのサーバーで復号化される。
(注2)ある病気の有無や進行度、治療の効果を示す目安となる生理学的指標。
(マルティン・シュトゥルマ)
(欧州、チェコ)
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