ギャンブル ゲーム 無料、最高裁判事指名など主要争点で非難合戦、次回は形式変更も
(米国)
ニューヨーク発
2020年10月01日
米国大統領選挙の候補者による第1回討論会が9月29日、オハイオ州クリーブランドで開催された。共和党のドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領が初めて直接議論を行った。激しい非難の応酬や相手の発言を遮っての反論で討論会が混沌(こんとん)としたことを受け、次回以降は形式変更が検討されている。
討論会では、大統領候補討論会委員会が設定したテーマに沿い、フォックス・ニュースでキャスターを務めるクリス・ウォレス氏が司会進行を務めた。新型コロナウイルス対策として、観客を一部の関係者とメディアに限定し、候補同士の握手や観客からの野次は禁止された。
冒頭は、連邦最高裁判所をテーマに、リベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の死去による後任人事をめぐって論戦が展開された。トランプ氏が9月26日に指名した保守派のエイミー・バレット現シカゴ連邦高等裁判事(48歳)が上院で承認されれば、現在の保守派5人とリベラル派3人の構成がより保守派に傾く。バイデン氏は、バレット判事就任によってオバマケアが撤廃され、既往症を抱える多くの国民が保険を喪失することや、人工妊娠中絶の権利を認める判決が覆されることへの懸念を表明し、選挙後に判事の任命手続きを行うよう求めた。トランプ氏はこれに対し、2016年の前回選挙で勝利した自分に任命権があると主張した。また、オバマケアを失策と批判し、9月24日に発表した医療保険改革の大統領令を通じて医薬品価格が大幅に削減されるなどと強調した。
経済面では、トランプ氏が大統領就任後の実績をアピールしたのに対し、バイデン氏はトランプ氏が富裕層のみに利益をもたらしていると批判し、自らの経済政策案()や法人税(現行21%)の28%への引き上げに言及した。新型コロナウイルスへの対応については、バイデン氏は大統領を無策と非難しつつ、事業者や学校への支援金の確保やマスク着用の重要性を強調した。トランプ氏は、民主党系の知事が選挙対策として新型コロナウイルスに関する規制を緩和せずに経済回復を妨げていると述べ、バイデン氏も国を閉鎖して破壊してしまうと発言した。
トランプ氏は、バイデン氏が急進左派に傾倒していると再三にわたってやゆした。人種差別を端にする暴力問題では、自らは白人至上主義への明確な批判を避け、責任の所在を急進左派に転嫁した。バイデン氏は急進左派とは距離を置く姿勢を示し、環境政策では、党内で候補の座を争ったバーニー・サンダース上院議員(民主党、バーモント州)が提唱する「グリーン・ニューディール」は支持せず、自ら立案した環境政策を支持するとの発言に踏み切った。そのほか、トランプ大統領はバイデン氏の次男の中国・ロシア政府との癒着疑惑に触れ、一方でバイデン氏は、大統領が所得税を少額しか支払っていないとの報道を基に追及した。両氏とも事実関係を否定するものの、疑惑を払拭(ふっしょく)する証拠を提示するには至らなかった。
討論会では、主にトランプ大統領が進行を遮り発言する場面が目立ち、主要メディアは討論会を「混沌」と形容した。「ウォールストリート・ジャーナル」紙とNBCニュースの共同調査(9月13~16日実施)によると、支持候補を決める際に討論会を重視する有権者の割合は約3割にとどまり、その影響は一時的かつ限定的との見方もある。他方、政治専門誌「ポリティコ」の世論調査(9月25~27日実施)では、大半の回答者が討論会は投票に影響しないと回答するものの、14%は投票行動を変える可能性を示唆している。
大統領候補討論会委員会は9月30日、次回以降は「より秩序だった議論」のために構成変更が必要との声明を出した。変更内容は近日中に発表する見込みで、今後は10月7日に副大統領候補による討論会、残り2回の大統領候補討論会(10月15日、同22日)が予定されている。
(藪恭兵)
(米国)
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