バイデン米民主党大統領候補、経済政策を発表、バイアメリカン強調

(米国)

ニューヨーク発

2020年07月14日

11月の米国大統領選挙の民主党候補になることが確実視されているジョー・バイデン前副大統領は7月9日、激戦州のペンシルベニア州で演説を行い、経済再生計画の要旨を発表した。米国を「より良く立て直す(Build Back Better)」とのキャンペーンフレーズの下、バイアメリカンにより米国の中間層を支えていく姿勢を鮮明にした。

中間層、労働者家庭、労働組合の重要性を強調

バイデン氏は演説の冒頭で、米国は新型コロナウイルスの大流行と、それに伴う経済停滞、人種的な不正義という3つの危機に直面していると指摘。これらに立ち向かうことで、拡大する経済格差という課題にも備えることができると強調した。また、米国を築き上げてきたのは、ウォール街の銀行家やCEO(最高経営責任者)ではなく、労働組合とそれが形成した中間層だとし、自身が大統領になれば、そうした人々のために立ち上がるとした。

バイアメリカンを通じて国内産業基盤を強化

バイデン氏は重視する政策課題として、(1)国内産業基盤の強化、(2)長期的に強靭(きょうじん)な経済の実現、(3)働く親への支援強化、(4)労働者層と中小企業への支援強化、(5)人種間の平等をもたらす包括的な方策の5点を挙げた。

(1)に関しては、大統領就任1期目の間に、インフラの現代化などのために4,000億ドル分の米国製品・原材料の連邦政府調達を行うとした。演説前に発表した政策案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(添付資料参照)でも、「バイアメリカン」の実現を明示している。また、中国の不公正な貿易慣行への対抗を念頭に、電池技術や人工知能、バイオ技術、クリーンエネルギーなどの新興産業の研究・開発に3,000億ドルを投資するとした。

(2)と(3)については、トランプ政権を無策だと批判した上で、自身の詳細な政策案を翌週以降に発表するとした。

(4)では詳細には触れなかったが、連邦最低賃金の引き上げ、労働組合への後押しを示唆した。医療保険にも触れ、オバマケアを拡張して無保険者が公的な保険に加入できる選択肢を提供するとした。一方、中小企業との対比で「今こそ実業界は相応の税金を支払うべき時だ」とし、トランプ政権で21%に下げられた法人税率を28%に引き上げるとした(注)。また、アマゾンを名指しし、こうした企業が連邦所得税を支払わなくて済む日は終わるとした。

(5)に関しては、単純な警察改革の話ではなく、米国における構造的な人種差別の深い傷跡に対処することだとし、マイノリティー層とそれ以外の所得格差の是正、住居選定の選択肢の拡大、起業家支援、教育機会の提供を推進する考えを示した。

(注)演説および政策案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも、28%が一律の税率か、累進課税制における最高税率かに関する言及はない。

(磯部真一、藪恭兵)

(米国)

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