雇用創出オムニバス法案が可決、企業活動への影響必至

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年10月13日

雇用創出オムニバス法案が10月5日、インドネシア国会本会議で可決された。同法案は、雇用創出のための投資誘致を目的とし、労働(最低賃金、退職金、失業補償)、投資など11分野について、関連する法律79本を一括して改正するもの。現在、労働省など各担当省庁・機関において、施行に向けた細則の制定作業が進められている。

同法案に含まれる11分野の法改正のうち、企業の事業活動に大きく関係するのは、事業許認可、投資要件、労働、中小零細企業、事業便宜、土地収用、経済地区、の7つの分野だ。今回、国会本会議で可決された最終法案にも、当初の予定どおり、最低賃金の算定方法改正や退職手当の引き下げ、外資規制の緩和(関連ブラック ジャック web)など、当地での日系企業の活動に大きく影響を与える内容が多く含まれている。一方、同法案には、最低賃金の計算式などの実質的な内容について、大統領規程や政府規制に委任する条文が多く、不透明な部分が多い。そのため、今後の細則整備の進捗とその内容を注視する必要がある。

当初の予定から早まった採決、労働組合などが大きく反発

当初、雇用創出オムニバス法案は10月6~8日に審議される予定だったが、急きょ5日に国会本会議で可決、成立となった(「ジャカルタ・ポスト」紙10月6日)。この点について、インドネシア経済・金融開発研究所(INDEF)エコノミストのビマ氏は「より深い議論・研究が必要な条項が多く含まれているにもかかわらず、雇用創出オムニバス法案の議論は拙速すぎる」と懸念を示した(「トリビューン・ニュース」10月5日)。

今回の可決を受け、労働組合などが大きく反発し、ジャカルタ特別州のみならず各地で抗議活動が広がった。抗議活動参加者の一部は暴徒化し、ジャカルタ特別州では、バス停や簡易警察署が放火されるなどの被害が出た(CNNインドネシア10月8日)。BBCニュースインドネシアの報道によれば、10月6~8日の3日間にわたる抗議活動の結果、1,000人以上が暴動を犯した罪で身柄を拘束され、その中には学生も含まれていた。ジャカルタ特別州や西ジャワ州では、新型コロナウイルス対策として、大規模社会制限を導入している中でのデモとなり、クラスター発生の懸念も強まっている(「ワルタ・エコノミ」10月9日)。

(尾崎航)

(インドネシア)

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