米司法省、反トラスト法違反を理由にグーグルを提訴

(米国)

米州課

2020年10月27日

米国連邦司法省と11州(注1)の司法長官は10月20日、反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反を理由に、グーグルをワシントンDC連邦地方裁判所に提訴外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。司法省は2019年7月、インターネットを通じて多様なビジネスの基盤を提供する、いわゆるオンライン・プラットフォーマーの反競争的行為に関する調査開始を発表しており(2019年7月26日記事参照)、1年を超える調査を経て、今回、グーグルの訴訟に動いたかたちだ。

司法省は、米国のインターネット検索市場で90%のシェアを占めるグーグルが、インターネット検索・広告市場での独占を維持・拡大するために、反競争的な手段を用いてきた、と指摘した。具体的には、主に次の4つの行為を問題視している。

  1. モバイル機器などに自社以外の検索サービスをプリインストールすることを禁止する排他的な契約
  2. 消費者の選好にかかわらず、自社の検索アプリのプリインストールを強制し、アプリを削除できなくする契約
  3. 検索ブラウザの標準検索エンジンとして「グーグル」を設定するように定めたアップルとの長期契約
  4. 検索エンジンや検索ブラウザでの優遇措置を買い上げ、継続的な独占を実現する行為

司法省は、これらの反競争的な行為は、新しい革新的な企業が成長しグーグルと競争することを妨げているとした。また、そのほかの弊害として、検索市場での競争抑制の結果、消費者のプライバシーやデータ保護などの面で検索サービスの質が低下した点や、広告市場での競争抑制がグーグルの広告主に対する過度な価格決定力につながっている点などを挙げた。その上で、これらの弊害を是正するために必要な構造的な救済措置をとることや、グーグルに反競争的行為を禁じることなどを求めた。企業分割など具体的な措置には言及していないが、司法省高官の1人は、全ての選択肢を排除しない姿勢を示している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版10月20日)。

米国政府による大手テック企業の反トラスト法違反に関する提訴は、1998年のマイクロソフトに対する訴訟以来となる。ジェフリー・ローゼン司法副長官はプレスリリースで同訴訟に触れ、「司法省は競争の役割を取り戻し、次のイノベーションの波への扉を開くために再びシャーマン法(注2)を執行する」とコメントした。また、ウィリアム・バー司法長官も「今日、何百万人もの米国民が日々の生活でインターネットおよびオンライン・プラットフォームに頼っており、同市場における競争は極めて重要だ」と、今回の訴訟の意義を強調した。

一方、グーグルのケント・ウォーカー上級副社長は10月20日、同社のウェブサイトで、司法省による訴訟には大きな欠陥があると批判し、「消費者は自らグーグルを選択して使用している。強制されたり、ほかに選択肢がないからではない」と主張した。

グーグルの反競争的行為をめぐっては、テキサス州のケン・パクストン司法長官が率いる各州・地域の司法長官グループも2019年9月から独自に調査を行っており、「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版(10月20日)は、近く同グループもグーグルを提訴する可能性がある、と報じている。

(注1)アーカンソー、フロリダ、ジョージア、インディアナ、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、サウスカロライナ、テキサスの11州。

(注2)米国の反トラスト法を構成する法律の1つで、企業の取引制限行為や独占につながる行為などを規制する。

(甲斐野裕之)

(米国)

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