日系VC、遠隔放射線診断スタートアップに出資、ヘルスケア産業にデジタル化の動き

(エジプト)

カイロ発

2020年08月28日

エジプトのヘルスケア・スタートアップRology外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは8月、日系のファンド運営・コンサルティング会社Asia Africa Investment & Consulting(AAIC)と、ドバイとサウジアラビアの投資家からアーリーステージとして資金調達した。同社はエジプトで既に80以上の病院と提携しており、病院や画像センターと放射線科医師をオンラインで結ぶ遠隔放射線診断のプラットフォームを提供する。また、「コロナ禍」でエジプト高等教育省管轄の3大学と提携し、人工知能(AI)によるCTやX線などのプレ・スクリーニングの事業を発展させているという。サウジアラビア、ケニア、コンゴ民主共和国、モルディブなどへ進出しており、今回の出資を受け、中東・アフリカでのさらなる拡大を進める。

AAICの半田滋ディレクターはジェトロのインタビュー(8月25日)に対し、「エジプトはアフリカの中でも放射線科医師の数が多く、技術水準が高い評価を受け、先進国に比べてコスト優位性もあるため、放射線科医師が不足するアフリカで、Rologyの遠隔診断は医師不足やへき地・危険地での医療問題の解決につながる」と期待を示す。また「ヘルスケア事業では現地化をいかに効率的・効果的にできるかがカギだが、今回出資に参画したサウジアラビアとドバイの投資家が両国への現地進出を支援し、AAICのアフリカ拠点でアフリカ展開も支援できる」と中東・アフリカでの拡大の可能性を述べた。AAICは既にエジプトで、歯科関連商品BtoBオンラインストアのDentaCartsやオンライン・メンタルヘルス診断・相談サービスのShezelongへ出資している(日系のAAICがヘルスケア・スタートアップに出資、ブラック)。

Rologyのように、エジプトのヘルスケア産業にデジタル化の動きがみられる。8月にエジプトで開催されたオンライン起業支援イベント「RiseUp From Home」()では、ヘルスケアのデジタル化トークセッションが多く実施され、2020年にエジプト・スタートアップ最大規模の4,000万ドルの出資を受けた医師予約・評価プラットフォームのVezeeta(2011年設立)も講演した。新型コロナウイルス発生以降のベンチャー投資は減少しているが、ヘルスケア分野は成長しているという。また、糖尿病など慢性疾患の患者向け自己管理スマホアプリ、医療ブラック クイーン ブラック ジャック・医薬品ブラック クイーン ブラック ジャックスマホアプリ、医者検索スマホアプリなど、起業間もないスタートアップもオンライン出展した。フランス系の大手通信会社Orange Egyptも現地クリニックと協力し、在宅医療や遠隔医療に乗り出すと公表した。「コロナ禍」で通院できるのは医師が必要と認めた人のみなので、インターネットを通じて遠隔や在宅で高齢者や子供の医療ケアを行う狙いだ。

なお、エジプトのスタートアップの分野別状況などは、ジェトロ調査レポート「エジプトにおけるスタートアップの現状」を参照。

(井澤壌士)

(エジプト)

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