米23州などがトランプ政権を提訴、新燃費基準の見直し求め
(米国)
ニューヨーク発
2020年06月02日
米カリフォルニア州など23州と5自治体(注)は5月27日、連邦政府に対し、乗用車と小型トラックの温室効果ガス排出基準とその達成手段となる燃費基準を現行基準から緩和する「SAFE車両規則(以下SAFE)」(米連邦政府が排ガス、燃費基準の新規則を発表、ブラック)を見直すよう求める訴訟を起こした。同訴訟で併せて、トランプ政権が再実施した2022~2025年モデルの車両に対する基準の中間評価の見直しも求めた。
乗用車と小型トラックの温室効果ガス排出量と燃費に関しては、2012年に環境保護庁(EPA)と運輸省道路安全交通局(NHTSA)が、カリフォルニア州大気資源局(CARB)や自動車製造業者などの意向を取り入れるかたちで、2017~2025年モデルの車両を対象に、燃費と排ガス量をそれぞれ毎年およそ5%ずつ改善する基準値を定めた。また2017年1月にはその中間評価を行い、同基準の適用期間後半である2022~2025年モデルについても2012年制定の基準を踏襲して適用することが妥当だとの結論に達した。しかしながら燃費基準の緩和を求めるトランプ大統領の下、連邦政府は2017年3月に中間評価のやり直しを発表し、その結果として2020年3月に、燃費、排ガス量ともに年ごとの改善率をおよそ1.5%にまで緩和したSAFEを発表した。
今回の訴訟を代表するカリフォルニア州は、EPAとNHTSAが現行基準を取り下げることは法令違反であると主張し、その根拠として、再実施した中間評価の結果を正当化するため、両組織が誤謬や省略、根拠のない仮定に満ちた分析に不適切かつ違法に依拠したことなどを挙げた(5月27日付プレスリリース)。
また、今回の訴訟に参加するミシガン州のダナ・ネッセル司法長官は「SAFEは環境に優しい技術への投資を妨害し、人々から燃費を向上させるインセンティブを失わせる。気候変動対策でわれわれがこれまで達成してきた進歩を危うくする行動には反対していく。これは米国民が負けるわけにはいかない戦いだ」と強い姿勢を示した (5月27日付プレスリリース)。
SAFEをめぐっては、既にゼネラルモーターズ(GM)やトヨタなど自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会 (AAI)が同規則を支持する立場を表明したが、フォードやホンダなどはそれに加わらず、業界内部での意見が分かれている(2020年5月29日記事参照)。
(注)カリフォルニア、コロラド、コネチカット、デラウェア、ハワイ、イリノイ、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ネバダ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オレゴン、ペンシルベニア、ロードアイランド、バーモント、バージニア、ワシントン、ウィスコンシンの23州と、ワシントンDC、ロサンゼルス市、ニューヨーク市、サンフランシスコ市・郡、デンバー市・郡の5自治体。
(大原典子)
(米国)
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