米自動車業界団体、新燃費基準でトランプ政権を支持
(米国)
ニューヨーク発
2020年05月29日
ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタなど在米自動車メーカーから成る自動車イノベーション協会(AAI)(注)は5月22日、米環境保護庁(EPA)と運輸省道路交通安全局(NHTSA)が定めた自動車燃費に関する新規則(SAFE車両規則)(米連邦政府が排ガス、燃費基準の新規則を発表、ブラック)を支持し、新基準値の緩和を求める米シンクタンク、競争的企業研究所(CEI)が起こした訴訟に連邦政府を支持する立場で介入すると発表した。
SAFE車両規則の下で制定された新基準値は、オバマ政権下で定められた現行の基準値に比べ緩和されている。しかし、CEIは経済的にみて実行不可能であるという理由から、5月1日に提訴した訴状の中で、連邦政府に対し基準値の凍結を含む見直しを求めている。これに対し、AAIは「基準の制定に当たって連邦政府は、適用される法的要件に従い、裁量権を合法的に行使した。(新基準は)燃費の改善と(温室効果ガス)排出性能のバランスを適切にとっている」と述べ、SAFE車両規則の妥当性を強調している(「オートモーティブ・ニュース」5月22日)。
今回の発表に当たり、AAIのジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は、「年ごとの改善を目指し、自動車業界はこれまでどおり団結していく」と述べ、燃費向上と温室効果ガス削減を続けていく姿勢をアピールしたが、現行より緩い基準値を支持するかたちとなった今回のAAIの対応に関し、一部関係者は厳しい見方を示している。ミシガン州選出のデビー・ディングル下院議員(民主党)は「失望した。世界の自動車市場が既に大幅に脱炭素化している中で、米国がイノベーションとテクノロジーの最前線に立ち続けるという目標を遠ざけるものだ」と述べた(5月22日付プレスリリース)。
SAFE車両規則をめぐっては、上院の環境・公共事業委員会が5月18日、EPAに対し規制策定において手続き要件の不当な回避がなかったか調査を要請したほか、カリフォルニア州と他の22州が現行基準の維持を訴える構えであることが報じられる(「オートモーティブ・ニュース」5月22日)など、その正当性や妥当性についての議論が続いている。
なお、今回のAAIによる訴訟介入には、フォード、ホンダ、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンは参加していない。
(注)2020年1月に、GMなど米系メーカーやトヨタなどをメンバーとする米国自動車工業会(AAM)とホンダや韓国の現代自動車など外資系メーカーをメンバーとするグローバル・オートメーカーズが統合。加盟メーカーで全米の自動車生産台数の99%を占める。
(大原典子)
(米国)
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