英国総選挙、保守党が優位を維持し、12日に投票へ
(英国、EU)
ロンドン発
2019年12月11日
11月6日に解散した英国下院(定数650)の総選挙が大詰めを迎えた。各種世論調査で与党・保守党が優位を保ったまま、明日12月12日に投票が行われる。ただ、同党と最大野党・労働党の差は徐々に縮まっており、なお予断を許さない。
与党・保守党は、選挙戦を通じて英国のEU離脱(ブレグジット)を争点に、ブレグジットを問う2016年の国民投票で離脱支持者が多数を占めた労働党議員選挙区の切り崩しを進めてきた。英国調査会社ユーガブが12月10日に発表した最新の分析(注)によると、保守党が労働党を9ポイント上回る支持率を確保、推計獲得議席数も339議席と単独過半数を確保すると予測しており、その可能性が高まっている(表参照)。他方、労働党は、解散前の議席数から12議席減の231議席と推計されている。当初注目されていたEU残留を目指す自由民主党と離脱を目指すブレグジット党は失速し、自由民主党は議席減、ブレグジット党は議席を獲得できない見通し。
ただし、前回(11月26日)の調査では、保守党の推計獲得議席数は359議席と今回より20議席多く、逆に労働党は211議席で20議席少なかった。勝敗の予測が難しい激戦区もあり、保守党が過半数割れになる可能性も、なお消えていない。
離脱か残留か、ブレグジットの方向を明確に示せない労働党()は、国営医療サービス(NHS)を中心にブレグジット以外の事象に焦点を当て、保守党に対抗。労働党は、NHSが2010年以降、保守党政権下での民営化などで大打撃を受けており、ブレグジット後には米国との通商交渉で保守党がNHSを米国企業に開放しようとしている(関連実写 版 ブラック ジャック)と非難を繰り返してきた。解散風が吹き始めた10月下旬以降、健康・医療に関する有権者の関心は高まっており(添付資料参照)、労働党の戦術は一定の効果があったようだ。
各党は激戦区を中心に追い込みをかけ、12月12日の投票日を迎える。
(注)MRPモデルという統計手法を用い、10万人以上からの聞き取りを実施、世代別の投票率予測や過去の投票傾向などを反映して選挙区ごとに分析する。2017年の総選挙では、多くの世論調査が保守党大勝を予測する中、同党の過半数割れを予見したとして話題になった。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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